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西松屋のニュースからダイバーシティを考える

今朝のニュース 働き方

本日気になったのはこのニュース

toyokeizai.net

❖記事の要点

  1. 全国900点で展開する西松屋は、国内大手家電業界の退職者を積極採用している
  2. 平均年齢は58歳。採用人数は80人を超えた。メーカー出身者が造ったPB商品の品番数は700を超え、PB商品の比率も7%弱になった。
  3. こうしたタレントが持つ経験は、PBの開発における生産管理に寄与している
  4. ローテク商品で部品も素材の数も少ないため、開発、工場生産、検査、物流、店舗の在庫管理など川上から店頭まで全部を自分の権限でやれる事がプラスに作用している

 西松屋と言えば、交通量の激しい道路から一本内側に店舗を構えて、駐車しやすい店舗にする、といった取組みどこかの記事で読んだことがあるが、このあたりの発想の柔軟さが好業績を裏打ちしているのかもしれません。

 私は西松屋で買い物した事無いですが、今度、行ってみたくなりました。

❖なんでこのニュースか

 このニュースの中で気になったのは、以下の部分。リテールに家電業界のエンジニアを呼び込む原動力として、製品開発力を獲得する事が主であった事が以下の発言から理解できます。

競合店と差別化していくためには、もっとお客さんの立場を考えた、本格的なPB開発が必要だ。われわれがイニシアチブをとり、企画から生産、品質、数量管理まできちんとできる体制にしたい。

 そして、西松屋が優れていたのは、以下のように信頼を置いて(言い換えれば自らの選択眼を信じて) 、任せた点でしょう。

彼らのノウハウは当社のチェーンストアのPB商品開発に十分使えるし、製造小売業を目指す当社にとって必要不可欠だ。

❖Inclusion (インクルージョン)  : 多様性の受け入れが鍵

 この事例から、私が理解したのは以下の点です。

  • 社内に多様性をもたらすという事は制度的な問題
  • むしろ大事なのは、Inclusion という「受け入れて活かす」事

 「仏作って魂入れず」では無いですが、仕組みを活かせるかどうかは使い手自身が変化に適応できるかどうかにかかっているという事です。えてして、「改革を期待された変化の触媒である外部からの助っ人」が機能するかどうかは「その人次第」である、という感じになりがちですが、来る人・受け入れる人、という二項対立のままでは活かしきれない事がうかがえる事例記事でした。

❖日本におけるダイバーシティの意味

 働き方・働き手の多様性という意味でのダイバーシティは政府の言う「一億総活躍」では無いですが、このところ話題になる事が多いです。

 なお、「ダイバーシティとは」的な話はこの佐々木かをりさんの連載等を読んで頂くのが役に立つかと。

diamond.jp

そんな中で、上記の佐々木さんコラムでの興味深い指摘はこちら。

つまりダイバーシティの本質は、性別でも年齢でもなく、「視点のダイバーシティ」であるというのが、私の指摘である。違ったものの見方ができる人が集まる組織が、健全であり、強い。

 この「視点のダイバーシティ」はInclusion の重要性にも相通じる部分があると勝手に読解しています。

 かつてイデオロギー的に語られた「女性の社会進出」については、そういった次元を既に乗り越えた所でトピックとして論じられるまでになってきたとも言えるでしょう。

❖日本のダイバーシティの現状をついでに見ておこう

 さて、ダイバーシティが重視される背景ですが、価値観的な尺度以外で言うならば、

・総人口が減少→国力(GDP)衰退→人口減少→国力さらに衰退→・・・

という悪いスパイラルを避ける為に、「働ける人に働いてもらい。納めるものを納めてもらう」という大前提がある事も要因と言えそうです。

[グラフ : 我が国の労働力人口と非労働力人口] H26 情報通信白書より

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/image/n4102010.png

「働き手」の総量が減る流れをどう補うか、という問題に対する打ち手として、

  1. 制度的・文化的に産後の復職が難しい女性への対応
  2. 高齢者労働力 (60歳以上)の活用
  3. 若年層の就業支援
  4. 外国人労働者の受け入れ

といったあたりが指摘出来る。

 ただし、#4の外国人労働者に関しては、中小企業における現場労働者不足に対する打開策という意味でのオプションというニュアンスが調査結果*1 からは読み取れますので、主に、#1~#3のあたりが主要な論点と考えて良さそうです。

◎諸外国との比較

 ただし、「男女共同参画」という意味では、まだ課題は多いようで、OECD加盟各国との比較に基づいて作成された以下のデータによれば、

(参考 : 平成22年度 男女共同参画社会の形成の状況 / 内閣府男女共同参画局より)

http://www.gender.go.jp/whitepaper/h23/gaiyou/html/honpen/img/zu01-03-18.gif

 

http://www.gender.go.jp/whitepaper/h23/gaiyou/html/honpen/img/zu01-03-19.gif

 

  • OECD各国との比較では22位
  • 棒グラフで示された就業率ではわかりにくいが年齢階級別でみると日本は未だに30代のところにある凹みが他国と比べて大きい

 いわゆるM字カーブと呼ばれる状態で、GDP全体の底上げを考えた場合に、働き手の総量としての女性活用とは別に、一般的に「働き盛り」の30代 から40代の女性の不足感は労働の結果としてのアウトプットにおいてかなりの損失になっている事は想像に難くない。( 別に50代以降は働いていもアウトプットが低いという意味では無いです) 

◎介護離職という別のハードル

 女性にとっての復職の最大のハードルがおそらく出産だとすると、男女共通のもう一つの課題は介護でしょう。とりわけ高齢化日本においては切実な問題。

 介護離職について厚生労働省の調査によると、あと28年後の平成54年には3878万人のピークを迎えると言われています。その後、人口の自然減で絶対数は減りますが、高齢率は平成72年 (西暦2060年です、念のため) には2.5人に1人が65歳以上という気持ちの悪い状態になります。

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 我が娘は2060年には45歳と人生でも脂がのった楽しい時になっているはずなのですが、周りを見渡せば高齢者だらけと。その時には私も鬼籍に入っていると思うので心配です。もう、こんな時代になると、シルバーシートじゃなくて介護と重税に疲れた働き手の為に、グリーンシートが出来ているかもしれません。「貴重な働き手である若者には席を譲ろう」みたいな。

 話を元に戻すと、そんな時代にむかっていくだけに、この介護離職という問題は相当に深刻だと思います。同調査による就業者と離職者における介護の状況を示したのが以下のグラフ。

f:id:takao_chitose:20160726184504j:plain

 離職者に関しては半数以上が「ほぼ毎日介護」。これで子育てもしていたら働く暇ないですね。就労者の方では「毎日介護」がやや低いですが、それでも3割りを超える方が「ほぼ毎日」というのは、自分の生活に照らし合わせたら恐ろしいものがあります。

◎高齢者の労働力

 最後に高齢者労働力を見ておきます。

 平成25(2013)年時点で60~64歳の雇用者は459万人、65歳以上の雇用者は375万人となっており、65歳以上の雇用者は増加しているのがデータから読み取れます。

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2014/zenbun/img/z1_2_4_02.gif

 

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2014/zenbun/img/z1_2_4_02.gif

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2014/zenbun/img/z1_2_4_06.gif

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2014/zenbun/img/z1_2_4_06.gif

 先に見てきた「介護離職」のデータとかを見ると、こうして60代以上で就業機会を得ていることは、少なくとも本人に意志と体力と能力があるからであり、こうした人達が増えていく事は、労働力の総量を押し上げる意味ではプラス材料です。ただし、いつかはみなが高齢者としてなんらかの介護や医療的ケアを経て他界していく事を考えると、「働ける高齢者には働いてもらいつつ、将来に対して貴重な若年層が就業機会を得て、納税とGDP増加に寄与できるように社会の構成バランスを整えていく」という二律背反するような命題が横たわっている事に暗たんとした気持ちになります。

 

❖無理矢理まとめると

 なんだか、気軽にダイバーシティの事を書き始めたら意外と根深い所に入り込んでしまったので、これはもう少し学習しながら理解を深めつつ、自分自身にとっても早晩訪れる課題として備えておかないと大変な事になるな、と痛感した次第。

 今の段階で思う所としてはこんなところかな。安っぽいマニフェストみたいですね 。

  • 前提として、働けるものは働くべし。そして納税すべし。
  • 世界と戦える労働力は意志、学習、経験の先にあるもの。
  • 男 : 女、高齢者 : 若年層、といった二項対立で論じていては問題は打開しない。
  • この国の為に Diversity & Inclusion は非常に重要。
  • 個人レベルでは 、成人は意識改革、子どもには教育を通じて学ばせる。
  • 企業レベルでは、視点を多様に、学び活かす制度と文化づくり 。そこにテクノロジーが貢献できる。

 

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❖その他参考

GDPの成長率と必要な労働力人口については、こちらの考察なども参考にされたい。