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軽めの仕上がり (はてな編)

Curiosity is the most powerful thing you own.

C-HR の広告を見てトヨタ車を選ばない理由を考えた

Marketing

 免許を取得してから28年。これまでに5台の車を乗り継いできたので1台あたり5-6年は乗っている計算です。旧車を丹念に手入れして乗り続けるようなマニアではなく、さりとて買う前からリセールバリューという名の意味不明な価値観に縛られた貧乏くさい車好きでもありません。色々と熟慮した上で選んだ車をある程度は楽しもう、というタイプです。
 今の愛車が昨年車検をくぐらせたので、もう一回は車検をくぐらせるか、思い切って来年あたりに買い替えるか、というのが今の心境です。某メーカーの方に伺った話だと買い替えは平均すると7~8年に一度のチャンスという「車が売れにくい時代」においては比較的良い見込み客という事になるのかもしれません。

 そういうプロファイルですので、情報収集は積極かつ継続的に行っています。そうしたコンテクストで出会ったのがYahoo! のトップインパクトを使ったこの広告です。

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「TOYOTAの世界戦略SUV C-HR」です。

 Yahoo! ID の情報とブラウザの閲覧履歴に基づいてターゲティングされているのであれば、40-50代あたりがねらい目なのかな、と。そんな事を考えつつ「しかし、40-50代狙いだからストIIって安直すぎませんかね。なんか世界戦略と銘打った車の広告がこれでいいんですか?  」というモヤモヤがよぎりまして、自分が今までトヨタ車を選んでこなかった理由をここで一度書き出しておこうかと思う次第です。

※キャンペーンクリエイティブはこちらでご確認いただけます。

toyota.jp

車に乗り始めた大学生の頃はストリートファイターII(以下ストII)は流行っていたなぁ。(ストIIは1991年にアーケードに登場)。だけどねぇ。。。

 

まずはリリースを当たりましょう

 このトヨタのC-HRという車、目にした広告から勝手に私の属する世代 ( 今、46歳です) あたりがターゲットと決めつけましたのが、調べもしないで断定するのはよろしくないのでリリースを読んでみました。

newsroom.toyota.co.jp

 むむ。ターゲットという言葉はリリースにはありませんでした。。。ちなみにリリースによればこの世界戦略SUV C-HRは、

  • コンセプトは「我が意の走り」 
  • プリウスとプラットフォームを共有しながらも運動性能に独自の味付け
  • レスポンス(即座に反応)、リニアリティ(忠実に応答)、コンシステンシー(車速、横G、路面に左右されない応答)を意識
  • コンパクトSUV市場はデザイン重視の顧客が多いので徹底的にこだわり、外観についてはデザイナーの想いそのものを実現すべく開発
  • スピード感あるキャビン形状・彫刻的な面造形・「ダイヤモンド」をモチーフに強く絞り込んだボディと大きく張り出したホイールフレアの対比など、独創的なスタイルを追求
  • 燃費はエコカー減税の対象に収めています

という事です。
 リリースからValue Propositionを上記のように書き出してみました。これによるとターゲットは「運転が好きで、車の応答性や操作性にこだわりがある人」といったサイコグラフィックなのかもしれません。かつてアルファロメオ 147のマニュアル車に乗っていた時期もあるので、そういう方向性の車は嫌いではありません。「トヨタ」を類推させる部分を伏字にしてこのテキストを読んだら魅力的に聞こえます。
 広告と同時に気になったのはこの車のデザイン。RANGE ROVER EVOQUEあたりの影響を何となく感じますが、しなくてもいい多面体にしている感じが最近のトヨタっぽい印象。好みのデザインではありませんが、実際にはプレデターみたいな顔のレクサスが2016年後半は前年比で下回っているもののそこそこ売れていたる訳ですし、人の好みは千差万別なのが良いところだと考えるようにしておきます。
 ちなみに四半期で12000台程度という事は、Volvoの年間販売台数、Audiの約半年分くらいは捌いている訳です。「日本でレクサスが売れない訳」みたいな記事*1を見かけたことがありますが、そうとも言えないんじゃないの? という感じです。21世紀のカローラとも呼べるプリウスを技術力と販売力の両輪で市場の一角を占めるまでの存在に育てられる会社です。レクサスにしても販売の大半はSUVタイプと聞きましたのでトレンドはしっかり押さえている感じです。こういったトヨタの地力を馬鹿にしちゃいけません。

f:id:takao_chitose:20170324213238j:plain(販売データは日本自動車販売協会連合会・全国軽自動車協会連合会、画像はレクサスRX 公式ページより)

 

トヨタ車に触手が動かない要因

 トヨタのすごさは認識しつつ、それてせも車好きとしてトヨタ車に関心が向かないのなんでなのか。マーケ視点、購入検討者視点、開発者視点で考えました。

▼マーケ視点

 職業病でこのバナー広告が気になったのは事実。Yahoo! トップインパクト ( 1週間で4400~4800万円也) にデモグラフィックターゲティングのオプションつけている訳ですから、その広告ターゲティングの精度向上に貢献するのもマーケティングに携わる者としての務めと思ってポチりました。
 踏んだ先で初めて知ったのですが、このストIIタイアップはキャンペーンの第二弾で、第一弾が原哲夫さん( 「北斗の拳」)、第三弾がトミカという具合で、まだ続く模様です。このあたりのネタの絡め手からするとやはり間違いなくターゲットは私のようなおっさん達とてみてよいと思います。
 ターゲットされるのは構いませんが、残念ながら私の認知度向上は獲得しましたが、購買意欲を1ビットも揺らさないこのキャンペーン、何が原因なのでしょうか。ターゲットと思しき世代の人が「かっこいい」とか書いているブログがあるので、「当たる人には当たっている」と評価されるべきものであるようですし。

トヨタC-HRのターゲット層とは?世代や年齢が気になる! | ミニバンとクルマのなんでも情報局

しかも、形(外観)が…

かっこいい!!!

おそらく、私の年齢に近い人はそう思っているではないでしょうか。
(筆者注 : このブログ主は2017年3月時点で49歳だそうです) 

 いや、思ってない人もここにいますからねー。と伝えに行きたくなりましたが、こちらの御仁とは「性・年代」というデモグラフィックと「運転する」という属性ぐらいしか共通項がなさそうなので交わらないのが幸せだと思っています。

▼購入検討者視点

 もう一か所、購買検討者があつまりそうなところで価格.comも覗いてみました。

価格.com - トヨタ C-HR 2016年モデル のクチコミ掲示板

bbs.kakaku.com

 本稿執筆時点( 2017/03/24) で、C-HRの価格.com掲示板には126のスレッドが立っています。価格.comデフォルトの分類方法 ( 質問、良い、悪い、特価、その他) に対する書き込みと反応の数を拾ってみました。
 言うまでもなく匿名掲示板のデータですので、そこはマンション掲示板と似たような感じで販売側あるいは競合側の覆面レビュワーや一般のアンチが書き込みしていたりするケースもあり、かつ「質問」に分類されていても中身が「良い」「悪い」の話であるものもありますのであくまで参考程度です。

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 今回は勝手に「潜在的共感度」という割り算をしてみました。リプライ ( = スレッドに対する書き込み) に対するROM(読んでいるだけの人) のリアクション数が「ナイス」ですので、それらを割り算する事で、書かれている事に対して「共感」や「サンクス!」が多く現れている方が世間一般にもその認識が強いのだろう、という推測です。そういう観点で見ると「悪い」が「良い」を上回ります。(だからこの車はダメである、という話では無いですよ。車は嗜好品ですからね。) 
 否定的な書き込みの中で目についたのは、デザイン性をアピールする割に他社製品と似ているでは無いかという点です。ここへきて、C-HRの国内競合も見てみる必要が出てきました。
 昔、アルファードに乗っている友人に「エルグランドと何が違うの? 」と質問して、「まずメーカーが違うな」と怒られた事があったのを思い出しました。日ごろ、情報収集しているとか言っておきながらこの体たらく。車好きは返上です。

C-HR、日産ジューク、ホンダVEZEL、マツダ CX-3を並べてみました。
(画像は各社のオフィシャルサイトより)

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 ま、興味が無い人からした似たり寄ったりという所です。車選びはデザイン > 性能と考えている私がこの中から選ぶとしたら、マツダCX-3です。唯一、ヨーロッパ車的な質感があるのが理由です。トヨタと日産はガンダムかエヴァンゲリオンを彷彿とさせる子供っぽさが趣味に合わない。過去2台乗り継いだホンダは自分が好きだった頃のデザインじゃないなぁ、というところ。 

▼開発責任者の視点

gazoo.com

 この投稿の為にここまでトヨタ車の事を調べるとは思いませんでしたが、開発責任者の想いも確認しておきたいと思います。主にデザインに関する部分を引用します。

今回は、格好良さと走りを追い求め、自分たちの指標でクルマを造りました。競合車と比較して目標を決めるのではなく、こうしたいという思いを軸に開発を進めて来たので、全くブレることはありませんでした。

 「格好良さ」と「走り」が並立する概念なのかは不明です。どちらも感性でしか受け止めれないので「見た目と動力性能」というニュアンスで理解しました。であれば、車のキャラクターの基本的な部分の話なので車好きなら皆さん同意出来る点だと思います。

車体に対して大きなタイヤをはめると、力強さと迫力がでてきて格好良くなるのです。(略)典型的なSUVの箱のような形でなく、ルーフのラインを車体中心から後ろに滑らかに低くなっていくクーペのような造形にしました。(略) 敢えて後部座席の視界は犠牲にしました。(略)また、後席の窓も、クーペタイプのクルマの窓みたいに小さくしています。とにかく、プロポーションにこだわりました。

 このあたりが実際の出来上がりに影響してくるデザインの考え方です。この車で実現する「格好良さ」が内包するものとして「力強さ」と「迫力」が挙げられています。

キーワードが、‘ディスティンクティブ(Distinctive=独創性)でした。他のクルマと違った際立った格好良さがポイントです。(略) オーバーハングを短くし、大きなタイヤをつけ、ルーフラインを後方に緩やかに低くすることで、力強いアンダーボディとスピード感のあるアッパーボディというカタチにし、ディスティンクティブを具現化しました。

 独創性は"Creativity"で、"Distinctive"は「独特の」というニュアンスですので、ワーディングについては違和感ありますが、「デザインでも独特な存在感を追求した」という事が言いたい事は文意から伝わってきます。前段で「他人は気にせず自分達の指標で」と言いつつ「Distinctiveでありたい」というのは興味深いところです。

まとめにかえて

 一つの広告をきっかけに色々と考えさせてくれるという意味では「すごい広告」だし「すごい車」なのかもしれないです。ただ、「心惹かれない理由」の核心にある違和感の正体が購入者、検討者、製作者といった視点の情報を読んでいくうちに像を結んできた気がするので無理やり今回のまとめに入ります。

▼デザイン

 正直、完成品のデザインについては好き嫌いの世界なので言っても仕方無いです。
トヨタという豊富な品揃えを有するメーカーの中に存在するひとつのモデルが、今後の全てのトヨタ車のデザインの方向性を示す嚆矢となるのかは現時点では分かりませんし、逆にこれまでの歴史を踏まえて生まれたようなデザインであるといった文脈も広報や開発陣のコメントからは読み取れないので、そういうものでは無いのでしょう。

 だとすると、ここで言う「デザインも徹底した」という意味はこのモデルに閉じた話になりますので、素人に「似ている」と書かれてしまう事のないデザインを見せてほしかったです。おそらく、コンパクトSUVというカテゴリに自らを置いた瞬間にデザインが同質化してしまう部分があるのは自明だと思うので「こんなSUVもありなんだ!?」という驚きは欲しかったです。
 本来のDisctinctive はポルシェ911とか、フェラーリ、ランボルギーニ、VWビートルといったシルエットでもそれと分かるような「塊としてのデザイン」が際立ち過ぎているか、BMWのキドニーグリルみたいにブランドにおけるある種のお約束的なデザイン予想であると思うのですが、そういったものが感じられないのが私がときめかない理由なんだと思います。これが全てのトヨタ車に通じるのだと思う。

▼広告宣伝

 最大の違和感は、「デザイン追及」しているのに「世界戦略」という看板が掲げられてしまうところ。工業製品として考えた場合、デザイナーが妥協なく突き詰めた先にあるのは極めて限られた需要か、新しいカテゴリを創造するようなものだと思うのです。
 前者であれば、「見よ、コンパクトSUVというのはトヨタが作るとこうなるのだ」と他者が無視できないエッジの強さを誇るはずですが、作り手自身が「他人は気にしない」と言ってしまっているのでこの線は無いです。
 後者であれば、「これからの時代はこんな車が時代の中心に来るのかも」と期待させるような新規性になりますが、こちらも「自分達が作りたい車」を「ヨーロッパのコンパクトSUVユーザ」が求める質感とかデザインまで気を遣ったレベルなので、何も「向こう側」まで飛んでません。
 私はこのように感じたので、「世界戦略SUV」というワーディングに疑問符しか湧きませんでした。「世界戦略 = 世界を変える」では無くて「世界戦略 = 世界で売れる」という事なんだと。それは最大公約数を目指しているのに等しいと思います。
 そんな話は売り手の都合でしかないのに、それを広告コミュニケーションでコピーとして押し出してくるのはどういう意図なんだろう、と。それに冒頭のクリエイティブですよ。日本のターゲットは舐められているのだろうか、と思いましたね。どう考えても世界戦略を具現化した広告クリエイティブじゃないし。

 今回はトヨタに対して否定的な事も書いていますが、別にディスりたい訳ではなくて、単に私が欲しくなるような車は出てこないなあ、という事を考えてみただけです。私は製造業としてのトヨタが有する「世界中に最大公約数を展開できる能力」というのは素直に凄いと思うのです。後発の真似っこデザインでもいいじゃないかと。思い立ったら真似ができるのがトヨタの力量な訳です。どこぞの国の単なる模造ではなくて、それなりに資源投下してトヨタらしいものとして作りこんでしまう能力は他社の追随を許さないレベルだと思います。(書けば書くほど馬鹿にしているみたいですが、そんな事ないっす。) 
 下品な言い方をすると、流行を理解しつつ「皆さんが欲しいのってこういうのですよね? 」と仕上げてくる感じです。リセールバリューに難が出るほどには冒険せず、乗り心地はトヨタ品質なのでご安心を、という「日本人が求める安心と冒険の匙加減を心得た中道」こそがトヨタの強みなんじゃないかと。
 このC-HRという車の広告戦略のセンスやコンセプトとの整合性は別として、「世界戦略SUV」という大見得は、世界に向けて「今のトレンドを反映してます。車の基本性能はしっかり磨き上げて、買いやすいお値段で、もちろん経済性と安全性は安心の日本品質。こんな具合でどうでしょうか? 」とカードを切ったのかなぁと。

 それが正解かどうかは分かりませんが、この「なんでも出来ますよ」という定食屋みたいなところが、私がトヨタ車に惹かれないのだろうなぁ、と再確認させてくれた広告でした。


 

テレワークは業績にプラスか? 等

 業界の巨人が廃止

 しばらく前にYahoo!がテレワークを禁止して話題となりましたが、つい最近もIBMが禁止を発表するなど、働き方改革の本丸みたいな位置づけのテレワークですが、ビジネスへの影響などを考慮して取りやめる企業のニュースも見かけます。今回は、最近廃止を決定したIT業界の巨人IBMの以下記事なども踏まえてのメモです。 

IBM: 自宅勤務制度の廃止を従業員に通告

http://newsln.jp/news/201702100743590000.html 

元記事はこちら

www.theregister.co.uk 

 最初に断っておきますが私はテレワーク賛成派です。ただし、「リモートワークやテレワークに賛成 or 反対」という二項対立でこの問題を捉えていないので「テレワークを認めない会社や精神風土(メンタリティ)は良くない」とは考えません。業種・業態・職種、そして企業の成長過程や企業文化など様々な要因が考慮されて就業規則というルールと企業文化は決まってくると思うからです。
 ただし、現代社会は個人の能力に依存するところが多なので、多様性や柔軟性に優れた労働環境を通じて個人の能力が発揮されるのであれば、テレワークのようなオプションは積極的に検討されるべきである、というスタンスです。経験上、テレワークという制度は少なくともホワイトカラーにとって時間の有効利用でアドバンテージがある事は否定しにくいと思います。

 なぜ、働き方の多様性や柔軟性を担保しておくことが個人の能力を引き出す事とは別の意味で企業にとって重要かというと、単純化やマニュアル化が可能な労働集約型の仕事は機械に委ねる時代になっているので、優れた発想や行動力を持つ個人を惹きつけるインセンティブにもなり得るからです。

 一方で、効果測定しやすい「テレワーク導入に伴う従業員の満足度」とは対照的に、「テレワークを導入した事で業績が上がった」という因果関係を証明する事は難しいと思います。さらに、今後サービス業の比重が増していく社会構造である点を考慮すると、そもそも業務が在宅で成立する業種・職種が限られてくるので、そういった事に対する不公平感のような世論が生まれる可能性があります。 

IBMが辞めた理由

話をIBMに戻します。
同社がテレワークを廃止した理由が色々と書いてありますが、印象的なところだけピックアップすると、

There is only one recipe I know for success, particularly when we are in as much of a battle with Microsoft and the West Coast companies as we are

とか

there is something about a team being more powerful, more impactful, more creative, and frankly hopefully having more fun when they are shoulder to shoulder. Bringing people together creates its own X Factor.

など。
 前者はMicrosoftの 他、西海岸系のコンペティターと戦う上では肩と肩を並べてチームが働かないと駄目である、という話。「働き方は自由でいいんじゃない」という文化を持つ西海岸と戦う際に同質化を取らず、異質化で攻めていく訳です。
 後者は肩を並べて働くことでチームがよりパワフルに、クリエイティブに、そして強いインパクトを生み出しながらもどこか楽しい雰囲気をもっているような状態になると考えているわけです。だから皆が一つ所に集うことが大事なカギだと考えている、と。実際、こんなことも書かれています。

I've spent a lot of time thinking about this, and a lot of time working with teams from real-estate, finance, HR, operations, the geo leaders, the marketing leaders

 自らリモートワークをしてみて、Watson にも相談してみて( 皮肉じゃなくて絶対していると思うので) 、その結果の判断なのでしょう。

テレワーク制度とビジネスの成績の関係 (Yahoo! Inc.編)

 ここで改めて確認しておきたいのはかつてテレワーク禁止を決定して話題を呼んだIT業界の別の巨人である米Yahoo! Inc.の展開です。

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Yahoo! Finance で同社のデータを見てみました。文字が小さいので補足すると、
 ・箱ひげはYahoo Inc. の株価を2012年のMarissa 就任時から2017年3月3日まで。
 ・青い線はNasdaqの平均
 ・赤い線は30日の移動平均
 ・左上の表は2011年から2015年までのKey Financial Data をAnnual Report から引用
 ・グラフに付けた吹き出しは特記事項を明示的にしています。

 Yahoo Inc.が在宅勤務禁止の発令したのが2013年3月ですので、そこからの推移を確認することを意図しています。過去3年にわたり株価が底を打ち続けていたYahoo! Inc. のCEO職を引き受けたMarissa からすると「社内で何が起きているのか」を掌握する事が重要な課題の一つであった事は想像に難くありません。その意味で、未来永劫どうするかという極端な話ではなく、企業戦略的には正しいチョイスだったのでは無いかという事が株価の推移からは見て取れます。
 その後2015年は一年かけて株価が下がっていく訳ですが、この時期はアドテクの進化やSNSの更なる発展、スマホやタブレットなどデバイスの多様化といった環境変化に対して彼らの対応が競合に比べて後手に回っていた事が顕在化してきた年だという印象です。(業界人的には)
 それでも2016年にはポートフォリオの見直しなど手を打って株価は下げ止まり、回復基調にのっていきます。現状、株価は就任時点と比べて213%まで引き上げていますので、テレワーク廃止の影響がどの程度寄与しているのかは専門家の深い分析に委ねたいところですが、頑張っているじゃないか、という解釈は可能です。

トレンドで見ると厳しいかもしれない

 とはいえ、株価ではなくてトップラインでかつて競合のAlphabet と比べると以下の通り。左がRevenue (売上)で右がNet Income (当期純利益) です。凡例はオレンジがAlphabetで青がYahoo! Inc.です。ここでは絶対的な金額の多寡では無くて、時系列での伸び率をつかんでください。Yahoo! Inc.が時代に置いて行かれている感は否定できない残酷なトレンドです。

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なお、Yahoo!Incの在宅勤務廃止のニュースの際は、次の二点で議論を呼びました。

(1)在宅勤務は本当の仕事とはいえない。真の仕事は、会社でしかできない

(2)在宅勤務は生産性を向上する。正しく行えば、出社して働くより多くの成果が得られる
(by Micheline Maynard ) 関連記事

 この二点について、私は在宅勤務可能な仕事と不可能な仕事が必然的に存在すると考えているので、(1)に関しては「真の仕事」という言い方が非論理的なので否定的で、(2)については「正しく行えば」の限定条件含めて同意です。この「正しく行う」が業種・業界・各社の文化によりバラけますので意見が割れやすいところだと思います。

 どういう事かというと、(根拠なく言ってしまいますが)日本の会社で営業さんが顧客に何かしら報告や提案をする際に「では次回のご提案はリモートからさせて頂きます」とか言ったら大部分の人が「何ですと?」という感じになると思うからです。

 Yahoo! Inc.とIBMでは業界的には隣近所みたいなもんですが、置かれている環境が違いますし、Yahoo! Inc.の業績に関して製品ポートフォリオの問題と、アリババの持ち株をどうするかという問題もありますので、この一例だけでは何とも言えませんが、頭の良い会社だと思いますので、こういった事例も精査しているものと思います。

  と、ここまで書いてIBMとYahoo! Inc.の過去10年の株価推移を並べてみたら2015年からのトレンドがやたら似てました。なんでしょうね、この感じ。(赤 : Yahoo! Inc. , 青 : IBM )

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テレワーク制度とビジネスの成績の関係 (IT業界編)

 あれこれ書いてきましたがやっとタイトルの内容に近づいてきました。テレワークと業績の関係についてのデータや文献を10分くらいサーチしましたがドンピシャなものが無かったので、データをつぎはぎしながらIT業界の数社に限定して調べてみました。このデータ集めるのが一番手間がかかったので小さな発見を期待しましたがやはり相関関係は見いだせず。
 ただお蔵入りさせるのはもったいないので参考までに。

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 元データはアメリカの flexjobsが出しているBest 100 Telework Companyの中からIT業界の主だった企業を8社ピックアップ、さらにランクには入ってなかったMicrosoftとFacebookを推進派の代表格という意味で追加しています。グラフの見方は以下補足の通りです。

  • 社名の上の数字
    そのランクで左から上位の企業。つまり「テレワークを導入していて従業員からの評価が高い」順序です。
  • オレンジ色の棒グラフ
    直近の従業員数です。各社の差が激しいので右軸で対数で示しています。対数グラフの意味が分からない方に説明しておくと、例えばSymantec とAppleの間には10倍の差があるという事です。
  • 青い折れ線
    直近の3年間の売上の前年比です。つまりトレンドとして成長しているかどうかをつかむためのものです。

 サンプル企業の従業員数は1万人から34万人の会社まで多彩です。人が増えている会社は成長過程の場合と衰退過程の場合のどちらもあり得ますが、そのあたりは青い折れ線で示した売上の伸び率のデコボコと比べてみると、多少IT業界に関して知識がある人が見た場合、味わい深いのではないかと。
 肝心のIBMですが従業員数がダントツです。Best 100 Telework Companyの7位にランクインしていますので、従業員にとっても慣れ親しんだ制度であり、支持されていることがうかがえます。
 反面、直近3年のトップラインはNegative Growth になっていますので、このあたりが経営的には危機感として捉えられているが故の判断なのだろう事が推測できます。できませんかね?

まとめにかえて

・まずやってみる

 神学論争のように賛否が分かれているテレワークですが、日本に関して言えば通勤地獄からの解放や子育て・介護との両立などに寄与する制度ですので、導入できる企業は試験導入で変化を観察するのがよいと思います。

・やってみて測る

 これだけテクノロジーが進化しているので、コミュニケーションを取ることの難易度はさほどありませんし。生産性を何で測るかを予め規定しておくことは重要ですが、定見がある話でも無いので、導入した場合に従業員の働き方がどう変化するかをIT部門と連携してデータを拾ってみる事でその企業にあったやり方が見えてくるのではないかと思います。例えばメールやチャットなどの量、ビデオ会議の利用頻度、勤務時間の分散、ミーティングの数など。一見して関係なそうなものも含めて「拾えるものは拾ってみる」が予断を排除するうえで大切です。

・「働き方」というよりは「働く」という事を改めて自らに問う
 おそらくテレワークについては、オフィスに来る事が仕事の前提という習慣に何の疑いも持ったことが無い人が多数いる会社の場合は、「使ってみたい人」と「理解できない人」の間に意識のギャップがあるはず。そういう企業では導入のハードルは高いでしょう。
 私は企業で働くという事は「自らの資源をもって企業に貢献して対価を得る」という感覚ですし副業も賛成派なので、個々の勤務先 ( = 契約先)に対するロイヤリティは持てたとしても、そこを個人の準拠集団とみなして同調圧力を働かせるような事に対しては否定的です。多様な労働観があって当たり前だと思うので、それを支援するために選択肢を用意する事が今の経営には必要なのである、というのが現状認識です。

 万が一、自分が社長になった場合は考え方が変わるかもしれませんが!

 

 

(追記) 宅配便急増で大変 > 解決方法を考えてみた

働き方 時事考

 前回のポストで触れたヤマト運輸さんの件について追記です。

takao-chitose.hatenablog.com

 前回の投稿は要約すると「ヤマト運輸さんが荷物の増加ペースにドライバーが足りなくて大変なことになっているらしいけれど、特にアマゾンプライムの影響で再配達などのコスト負担も大きいらしい。さてどうしようか、という事で無責任にアイデアを出してみました」という内容です。

 そしたら3月2日の日経にこんな記事がでていました。

ヤマト、苦渋の転換 顧客志向の哲学は曲がり角 :日本経済新聞

 荷物の増加もさることながら、無料で再配達というサービス体系が収益を圧迫する要素になっている、という話です。これはその通りで、適当なタイミングで有料にすれば良い話だと思います。なんでもタダにするとサービス業に対する理解が進まず、消費者の質が低下する気がします。

 実際、総量抑制を企図した値上げや代替サービスの展開を予定している報道も出ていますので、関係する従業員の労働環境を改善しつつ、収益を維持する手立ては講じはじめているようです。このあたりのタイムリーな動きがあるので株価も大して下振れせずにもっているのかと思います。(今のところは) 

www.nikkei.com

❖時代の変化に適応するのは経営そのもの

 ハードウェア消費が中心の時代は機能を規定するのはメーカー側なので、いくら消費者から文句が出てもメーカー側のタイミングでコストを含めた機能改善をしていく事が(結果的にブランドが支持されるかどうかは別として)可能でした。
 ところがサービス消費が中心の時代においてはサービスの具体的な提供者が人か機械であるため、少なくとも人が関与する部分はサービスエージェントである人に積み込めるだけ機能を詰め込んでしまう傾向にあると思います。こうした流れは日本人の民族性なのかもしれませんが、私が典型的な例だと思うのがコンビニの店員です。彼らの覚える仕事量と作業スピード、そしてコンビニが持つ需要の振れ幅は極めて高いと思います。
 都心のセブンイレブンでは外国人従業員がほぼ確実にシフトに入っているような気がしますが、これはコンビニの店員をやりたい日本人が減っているというよりは、その仕事をこなせる日本人がそもそも減っているのでは無いか、と穿った見方をしてしまいます。なぜかというと、いくら人件費が日本人よりいくらか安いとしても、採用と教育のコストはむしろ日本人より高いはずなので、それでも外国人従業員が増えているという事は、そういう事なのかなと感じてしまうわけです。
 要は、労働を取り巻く課題ってのは日本国内の事象として捉えているだけでは潮流とか見誤るよなあ、という意識です。

❖当のアマゾンはどうしているのか

 話がだんだん広がりそうなのでアマゾンのシッピングのところに戻しますが、現実的にはアマゾンプライムのSLAがあるので、ロジスティクスを請け負うサードパーティーが消費者に再配達コストを請求することが出来ない可能性もあります。
 そうするとヤマト運輸さんが単体でそのコストを吸収していくしかないのか、という話になるのですが、交渉実らずアマゾンのSLAに適応するように修正するのかは外野には分かりません。価格に厳しいアマゾンがそう簡単に折れるとも思えませんが、日本のプライムは年額3900円 (2017年3月2日現在) で、アメリカだと年払いで$99です。為替を考えるとまだ価格差がありますので、このあたりの調整を通じて対応する可能性もあり得るでしょう。特に、ヤマトを利用する他の国内ECがヤマトの値上げを受け入れた場合はアマゾンも無視は出来ないでしょうし。

 で、そんな事態は先刻お見通しなのかどうかはわかりませんが、当のアマゾンは一方で自前のシッピング会社の構築も模索している模様です。

www.usatoday.com

 この報道は2016年4月のもので、その後大きな話題にもなっていないですが、フランスの物流会社の株を買い取る形でじわじわと手を広げています。報道に対して米のUPSは「大丈夫。パートナーとして良い関係を維持してますよ」てな談話を発しています。ヨーロッパ以外でも本国アメリカの地域レベルのパーセルサービスを買収するような観測も出ていることから同じことが日本で起きても不思議ではありません。
 例えば前回の投稿でも軽く触れた赤帽の買収とかどうでしょう。地域ハブまではヤマト、そこから先のラスト1マイルみたいな部分は赤帽改めアマ帽とか。

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 規模で比較する意味はないのですが、全国津々浦々をカバーする個人事業主の集合体である赤帽は買収候補としては筆頭になり得るのではないかと一人で興奮しています。故あって自由な働き方を求める人のオプションになるかもしれませんし。ちゃんとメンテすれば30年は走るとも言われる赤帽仕様のスバルサンバーでひと稼ぎというのは新しい就職先(個人事業主ですけどね) として検討されるべきかと。

  と、赤帽さんの話は半分冗談で書いていますが、アマゾンのAnnual Report のCompetitionの中にはこのような記載があります。

companies that provide fulfillment and logistics services for themselves or for third parties, whether online or offline;

 という事で、「オンラインかオフラインかは問わず、フルフィルメントやロジスティクスを自らないし外部のために提供している会社は競合です」と投資家の皆様に伝えている訳です。裏を返せば、ここで利害が一致しない場合は戦いますよ、という話です。

 メール便なきヤマトにとってはアマゾンが牽引するEC市場の成長軌道にうまく乗っていくのは必須だと思います。そしてアマゾンが新しい試みを持ち込めば、それを楽天が結構な確率で模倣してくると思いますので、二次的な市場の広がりも期待できるわけですから手放すべき市場ではありません。
 内部構造の転換と代替サービスによる顧客維持をバランスさせられるという期待をもって事の成り行きを見守りたいと思います。( 別にヤマトホールディングスの株主ではございませんが) 

 

 

宅配便急増で大変 > 解決方法を考えてみた

時事考 Marketing

 このあたりの記事がスタートなのかと推測していますが、ヤマト運輸の悲鳴がタイムラインにチラチラ流れてくるので時事ネタに対する感想として簡単に思うところを記録しておきます。

www.huffingtonpost.jp

❖ニュースのポイント
  • 宅配便の量が増加して今の人員では対応できない。(年間18.7億個)
  • これ以上さばけないから引き受け抑制してほしい。
  • 夜間時間指定や再配達サービスの見直しを希望。

 春闘の争点に関するニュースでもあるので、労働者側から経営者側に対して「仕事減らして給料あげて」といった要求が出ている、といったあたりは割り引いて受け取った方が良い話だと思いますが、身の回りの反応を見る限りでは、

  1. いち早く配達されることが本当に価値あるサービスと呼べるのか?
  2. 無料といいつつどこかにしわ寄せがいっているのだアマゾン、楽天けしからん!

といった趣旨の意見が散見されたのが印象的でした。
 1は別のトピックでも見かけることがありそうな価値観の話。
 この手の価値観を担ぎ出すとピザの出前やカクヤスはどうなんだ? とか、電車の定時運行にどこまで潔癖さを求めるか、といった類似ケースが出てきます。
 ことの本質は差別優位性が乏しいリテールがとった戦術の結果、想定よりワークロードがあるので補正しよう、という話だと思う。よって「そんなに急がなくてもいいじゃないか」運動を消費者側が展開したところで、空いたスペースに誰かが入ってくるだけだと思います。

 2はサービスの体系をあまり理解していない物言い。
 アマゾンプライムは有料ですので、おそらく楽天のあす楽に対しての物言いかと思います。私自身はアマゾンヘビーユーザーでプライム会員で、楽天では一度も買い物をしたことがないくらいに利用が偏っていますので楽天のサービスに関しては、前職で出店していた時の経験でしか語れるものはありません。正直、あまり好きな会社ではないですが、利用条件が明示されている点であくまでも店子の努力目標という位置づけかと。ただし、あす楽サービス安心宣言に書かれている、

ショップからのお詫びとして購入金額の5%相当の楽天スーパーポイントを付与します。

これは、、、嫌な印象です。
 構図としては「アマゾンに対抗しないといけないので楽天としてはあす楽を全力で推しますよ。だから乗ってくれたら露出とかでいいことありますぜ。ただしSLAに違反した場合のペナルティはテナントの責任払いで」という市場の主人の強さがにじみ出ています。もちろん、店子にもどこに店を出かという選択の自由はあるので、楽天の付加価値向上のための原資が店子の努力だけで成立していることに耐えられないのであれば、FBA (Fullfilment by Amazon)でもYahoo! ショッピングでも流れるでしょう。

 ちなみにアマゾンについては、Amazon Inc. のSEC Filing に基づく分析として、以下の記事の中で、2016年は$7.2B ( およそ8100億円) もNet Shipping Cost が発生しているというデータが提示されています。

www.geekwire.com

上記記事内にあるグラフ

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 「アマゾンは他人の犠牲の上にサービスを成立させている」みたいな認識を持たれている方はこのあたりのデータも理解しておいた方がよいです。物流というのはとてもコストがかかるものでリテールにとって生命線ですので、損益分岐と顧客満足度の見合うラインを模索しながらサービスしているのがビジネスであり、そこに観念的な視点を持ち込んでも生産的ではありません。

❖このニュースで検討したい点とアイデア

まとめてもかねて私の考えているところをまとめてます。
このニュースは、

  • 個別企業の労働力確保の話であり
  • 対価を払った消費者がそれに見合うサービスを享受している

という意味において、いち民間企業が成長機会(荷物の増加) にどう対応するかという興味深いケーススタディですが、倫理観や価値観に訴えて何かを問題視する話では無いと考えます。
 ただし、いくつかの点について検討されるべき点はあると思うので以下に。所詮、私ごときが思い浮かぶアイデアなので、どこかで既出のものもあると思いますが、ものごとに柔軟に考えて、課題を機会と捉えたい性分としていくつか開陳しておきます。

◆再配達の手間について

 前半の主張をひっくり返すわけではないですが、「なんでもかんでも今日中、明日中に届いている必要ってありますかね? 」という点については理解できます
 少なくともアマゾンでは配送のオプションを選べますので、個々の消費者の価値観とニーズにおいて適切な配送タイミングを選ぶ事は「宅配会社の課題にも寄り添った生活者」という意味では良いことだと思います。本当に急ぎなら小売店で手に入るものであれば普通はお店に走るはずですし。(高齢だったり障害で身体の自由に制限がある場合は除きますが) 
 人間の性という意味では「会費を支払っているのだから届けせれるならさっさとお願いしますよ」というニーズは無くならない気がしますので、悩ましい部分。いずれにしても再配達を取り巻く二度手間、三度手間、というのは確かに生産性の観点で無駄があると思います。そこで 、

  • ドア前に放置してOKというオプションを作る
  • 時間指定で不在の場合は消費者責任という事で最寄りのコンビニ留め置き
  • 梱包を工夫してポスト投函で済む形式を増やす

といった改善はあっても良いかと思います。

◆受取り方法の多様化を支えるアイデア

  • コンビニとの提携
     これは有効。
     コンビニが荷物を預かる理由は来店のきっかけを作れるからです。これがわかってないと思われるコメントを朝日新聞デジタルの記事についたコメントで見たけどどんだけ世間知らずなんですか、という感じ。コンビニからすれば供給過剰気味な店舗網の中で来店理由になるので、それだけで御の字。商品購入以外にも着払いのためにATMで現金引き出してくれれば手数料も入るわけだし。
  • 新聞配達と提携
     我が家のお向かいはアマゾンプライムのための宅配を請け負う会社がありまして、毎朝6:00台から10台くらいの軽ワゴンにたんまり荷物を詰め込んで走り回っています。
     素早いデリバリーのためにはこうしたハブが必要で、そこに相性が良いのが新聞販売店じゃないか、というのが私のアイデアです。地域を細かく分けた配達網がすでに確立されており、地域の道路事情にも精通しているので「配達」のためのReadinessはとても高いです。ドライバーの確保という意味でも、既存資源の活用も出来るわけですし。さらに新聞の発行部数の低下が経営課題である新聞販売店にとっては渡りに船な提携ではないかと思うのですがどうでしょうか?
  • UberRUSHとの提携
     これは文字通り。個人の能力をテンポラリーな宅配資源として活用する方法です。トランスポーターという映画がありましたが、あれのカジュアル版です。UBERは日本においてはタクシー業界と揉めて以降、やや静かですが、Uber Eats もサービスインしていますし「ものを届けるために個人のリソースを活用する」という意味ではUberRUSHも有効です。日本には昔から赤帽という組織がある訳で、全くの黒船サービスという訳でも無いですし。

    https://rush.uber.com/how-it-works

  • ご近所受取り
     なんか昭和の中頃みたいな話ではありますが、向こう三軒両隣って言うじゃないですか。あの感覚で「あらかじめ当事者同士で合意されている」前提でそういったサービスが復活できないものかと。単身者世帯が多いエリアでは難しいですが、成立するエリアもあるのではないかと。それの旗振りをヤマト運輸にゆだねるのも筋違いな気がしますが、「他人の荷物預かりますよ」という人を公募して、配送オプションで「不在の場合は近所の〇〇さんが受け取ってくれます」みたいなオプションを提示するイメージ。Time Ticket のサービスをアレンジする感じです。
  • 機械化の推進
     これはドローン配達につながる話ですので短期的な解決策では無いですが、いきつくところ、自動運転車とドローンのコンビネーション等も地域を限定するとは思いますが普及すると思います。あるいは一軒家ならペッパー的なものが受取代行するとか。これは大きな産業構造の転換という文脈で見ると、物流における労働集約的な部分について、現在の方法では対応しきれなくなったので機械化します、って話にもなってくるので、「再配達まじつれーわ」とか人間が言ってられる今のうちは実はまだ良い時代でした、なんて事にもなりかねないな、と。

 オンラインもオフラインもリテールを取り巻く環境はそれぞれに厳しさがあると感じています。ただし人口減少というのは日本国内の全産業に共通の課題ですので、それはリテール苦戦の理由にはなりません。そうすると、なにかしら構造的な転換が遅れているとみるべきです。

 その一つがこのロジスティクスというか配送時間の短縮化に関連するものであるというのが私の認識です。日本人が得意としている正確・緻密・丁寧な仕事ぶりを体現していくことに現在のやり方では限界が見えているのあれば、それが変革のドライバーになるはずです。

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更新記録 2-Mar.2017

・冒頭のnhkの記事がリンク切れしていたので、ハフィントンポストの記事に差し替え

・この投稿の追記を書いたのでそちらへのリンクを追加

takao-chitose.hatenablog.com

 

書斎を作ってみました

雑記

 今回は生活感のある投稿です。
「月に一冊も本を読まない」という人が47.5%*1もいる我が日本ですが、私自身は「趣味は読書」と胸を張って言ってます。

 とは言うものの、若いころにマージャン卓囲む暇があったらもっと本を読んでおけば良かった、という後悔を常に抱きながら寸暇を見つけてはページを繰る毎日です。ちなみに私の読書観については、縁があってコラムを書かせて頂いているPARAFTさんで書いてみましたのでよろしかったらどうぞ。
※読書に関するコラムは2/13の週で公開予定。👇されました

paraft.jp

 

❖やはり書斎は重要

 読書家にとって「書斎」という言葉が持つ魅力は底なしだと思います。カメラ愛好家にとってのレンズ沼と同様に、自分の書斎で優雅に本を読む姿を思い描かない読書子は多分いないと思います。

 かくいう私は以前住んでいたマンションのサイズに合わせてカスタム本棚を制作したのですが、その後、転居したにもかかわらず無理矢理使っている貧乏くささ。
 いい加減に限界を感じたので、一念発起して書斎リフォームを決意したところ。

 <片づける前と後> めちゃくちゃ汚くて恥ずかしいのですが。。。多分50-70冊くらいは捨てたかと。

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❖5畳の部屋に夢の空間を作る為に考慮した事

 理解ある家族のおかげで5畳の部屋を私用にあてがってもらっているのですが、せっかくのリフォームですので目的を明確にしておきたいところです。そこで、整理してみました。

  1. ゾーニングを決める
     元々この部屋は自分の部屋として、本、趣味の品々(サーフィン、ゴルフ用具)、CD/DVD、洋服がありました。これらの物品は今後も存在する事に変わりないので、ゾーニングだけは明確にする事で整頓する。
  2. 軽めの断捨離
     限られた空間で将来の物量増加に備える為、Reserved for Expansion が大切です。私の場合は読まない本の処分はもちろん、電子書籍を買い直して物理的に無くすといった対策を取りました。
  3. 書斎の作り方を決める
  • とりあえず作る場合
     予算を優先する場合はこのパターンです。既製品の組み合わせ。組立家具はIKEAを筆頭に色々とオプションがあるので、この中から価格と趣味が折り合って、まあまあ満足の行く空間が仕上げられるならそれも良いと思います。部材が安い分だけ経年劣化が心配ですが、定期的に空間をリニューアルする楽しみと割り切れば悪い話ではありません。私は手持ちの書籍を納めるにはIKEAの出来合いではどうにもならないことが分かったので選びませんでしたが、モダンな空間が好みの方の場合、店舗に行けばアイデアの宝庫ですので検討する価値があります。話が少しそれますが、この手の既製品で手軽にオシャレに仕上げたい人は多分、家も賃貸派なんだろうな、と勝手に推測してます。
  • 長く使う事を想定する場合
     街のインテリアショップやリフォーム専門店等で図面から引いてもらうのが基本で、あとはこだわりと許容可能な予算内でセミオーダーかフルオーダーか、などを詰めていけば良いかと。セミオーダーの場合はコンポーネントが自社製の場合はモジュール的に組み合わせていくだけ。セレクトショップであれば、ベースとなっている製品をカスタマイズしてもらって、なるべく部屋の空間を有効に使えるようにレイアウトしていく感じでしょうか。
     なお、セレクトショップで行く場合、都内であれば目黒通りを一往復すると結構、お腹いっぱいになります。ただ、書斎そのものを店内に作っていない店もあるので、一点ものの本棚やマルチラック、書斎に置くであろう椅子や照明類のテイストを見ながら自分のセンスに合うお店を探すのがよいかと。良いものに出会うまでにそれなりに時間はかかりますが、そういう「探している時間」もまた楽しいものです。
     ちなみに私の好みは、このあたりのお店です。

    f:id:takao_chitose:20170131175216j:plain

    karf(カーフ) コンセプト | karf(カーフ)/blackboard(ブラックボード) 目黒・中目黒・つくばインテリア/家具/ビンテージ -

        f:id:takao_chitose:20170131175322j:plain

 

        TIME & STYLE | タイム アンド スタイル

 

❖で、自分はどうしたか?

 ゾーニングと軽めの断捨離は問題無しで、後は「どこに頼むか」という所に時間かけました。最初はIKEAで何となくイメージづくり、次にリフォーム屋さんを予約して、ラフに図面を書いてもらい、素材見本なんかも借りてみました。ただ、化粧板の質感がどうしてもしっくり来ないので却下。

 ちなみに私のイメージとしては、40過ぎてハマったサーフィン道具も共存する事から、重視したのは適度なカジュアル感と部屋が明るくなるようなモダンなカリフォルニアテイストです。自宅マンションのレイアウトが、いわゆる田の字型のレイアウトでは無く、リビングを中心に部屋が広がるレイアウトの為、書斎を開放した時に他の部屋と素材感やトーンで違和感が出ない事と、既に使っている家具( ダイニングはデンマークの50年前ぐらいのもの、リビングはkarfのモダン系)でそれぞれにメリハリつけた空間にしているので、書斎そのものは少しあっさり目に落とし込む、という具合の空間を目指しました。

 すると、そんな細かい事を叶えてくれる既製品は多分無い、という結論になり、親しくさせてもらっている建築士の友人に発注する事になりました。その人のセンスも信頼していたので、適度に意匠をこらしていただき、オリジナル本棚を製作するという贅沢なチョイスになりました。
 ただ、贅沢といっても化粧板で構成されたリフォーム専門店の見積りよりは少し安いぐらいでしたので予算という意味では問題なしでした。

❖実際の風景

 さて、昨年5月に下見をしてもらってから図面の直しや材料選定などをのんびり進めて、無垢材の調達と加工、書斎のフレーム製作などの下準備を済ませて、2月第一週にいよいよ工事とあいなりました。

<工事中> 素人の出る幕では無いので、職人さんの仕事ぶりを堪能させていただきます。
・壁沿いに事前に加工したフレームを組み付けて、棚板を固定していきます。床は40mm程度固定。
・天井の煙感知器を設計段階でかわしてもらい、組み付け時にもそこが干渉しないようにフレームを加工してくれているプロの細かさに感動。

・リビングにつながる扉の上にサーフラックをセット、ウェットスーツ用のハンガーも特設して収まり良く。
・書棚の棚板は200mm程度を確保してもらい、上下は稼働できるので本の判型に併せて調節可能。

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<出来上がり> 木の香りと手触りがスゲー。。。癒し空間です。
・タモとナラで迷いましたが、先に掲げたポイントも考慮して中性的なタモ無垢材にして大正解でした。
・書棚は天板の上に5段。この天板のL字部分も棚になっていて小物などを整理しやすくしています。

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  こんな感じで実際に本を入れてみてもなかなか壮観です。本棚を開陳するのって、自分の趣味嗜好とか脳みそを裸にしているみたいな気恥ずかしさがある反面、並んだ本を眺めていると、読んでなかったり、また読みたい本が出てきたりしてとても新鮮。

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 繰り返しになりますが、天板も棚板もすべてタモ無垢材を使ったので、木の香りが素晴らしい。これから経年で木も表情を変えていくと思いますが、その変化が味となって、既製品や化粧板の塊では味わう事が出来ない風合いにつながるんですね。楽しみです。私の個人的な結論としては「一生ものの家具を作るならケチらずに無垢で行きましょう」です。

 

・今回のお世話になったのはこちらの「市川設計事務所」さん。逗子・葉山が中心という事ですが、ご本人はフットワーク良く全国に出て行かれているのでご興味のある方はぜひ。こういう良いお仕事をしてくれる友人に恵まれた事に感謝しつつ、Worksに出てくるようなオサレな家をいつか建てたいと固く心に誓うのでした。

www.ichikawa-arch.com

*1:平成25年度「国語に関する世論調査」(文化庁)より

広告主とマーケターの視野がズレている話

Marketing
◆プロローグ

 私は前職でさんざんEコマースの為のオンラインマーケティングをやった後で、ここ数年はデジタルマーケテイングと呼ばれる領域で

  • データドリブンなマーケテイングのインフラ構築と運用
  • ソーシャルやオートメーションを軸にしたマーケティングプログラムの導入
  • オウンドメディアのプラットフォーム改革

といった感じで割と横断的な仕事をチームを率いながらやってます。

 こういったマーケティングのファウンデーションを取りまとめながら、一方で短期的な成果が求められるフィールドマーケティングとの間で、施策の一貫性や全体最適といった観点で折り合いをつけたりする毎日です。
 さらに、名刺交換で不思議がられるのですが、何のつながりも感じられなさそうなB2Bのイベントという脂っこい分野もポートフォリオに入っております。自分の中では両者の共通項は「不可視」か「可視」かは別として、人と企業のインタラクションが発生している事、という点です。

◆何となく感じる違和感の存在

 そういう仕事に携わっているので、メディアの営業さんはもちろん、デジタルマーケティング支援を生業とする会社の方とのお付き合いもあります。若くて優秀な方もいらっしゃる業界で、起業する度胸と根性が無い私は素直に尊敬してしまいます。

 その一方で、デジタルマーケティングの会話は意識高く盛り上がるけれど「この人にオフライン広告とかマス広告の話はどれくらい振ってもいいのだろうか?」と逡巡する事がたまにあります。
 何故かというと、私は営業さんと会話する時にどんなクライアントを担当しているのかをまず聞きます。NDAで社名が出せない場合は業種とかを差し支え無い範囲で。
 その上で、そこのお客さんの課題って何ですかね? みたいな話を振って、どんな感じで担当クライアントを説明してくれるかを見ながら相手を査定している訳ですが、時折その会社の守備範囲の話ばかり話す人がいらっしゃいます。
 ま、そのクライアントさんと自社の接点を説明する事で魅力を理解してもらう、という意味でのセールストークとしては一理あります。なのでそれ自体は悪いとは思いません。ただ、「そのクライアントさんの課題は何ですか」という問いに対する説明としては褒められたものではありません
 マーケティング課題の大部分がデジタルマーケティングで解決される会社や業種もあると思いますが、多くの会社のマーケティング部門は数々の課題に対してメディアやコミュニケーションチャネルをミックスして取り組んでいると思うのです。だからO2Oとか出てくるわけです。
 そういう風に考えたとき、「この担当は単に自分の会社の実績が語りたいのである」という例外を除いて、もしかしてあんまりクライアントのメディアミックスとかコミュニケーションミックスを気にしてないのでは? (しかも悪気無く、無意識に) という疑問符が浮かんだわけです。

 私が北海道のど田舎で産能大学の通信教育をやりながら広告宣伝をかじり始めたのは今から20年くらい前になります。世の中がアムラーに沸いている時にコトラーとか学び始めた訳です。印刷物のイロハから始まって、やがてデジタルが普及していく過程で経験を積ませてもらった世代です。


 何が言いたいかというと、マーケテイングコミュニケーションしている側からすると、Push / Pull、オンラインとオフライン、ATL / BTL / TTL、トリプルメディア( これ好きじゃない) といった概念は物事を整理する上で役に立ちますが、これらはいずれも手法です。なので、目的に対して取り得るオプションという意味でどれも最初の内は平等に見ている訳です。(それは俺だけじゃないよな、と信じつつ断言。)

 だけど、もし相対しているプランナーさんや営業さんが同じ尺度で物事を見てない場合、ディスカッションの内容が偏ったり、噛み合わなかったりというケースが出てきます。反対にこのあたりの「会話の合わせ」が上手な営業さんとに出会うと楽しいです。余計な事まで話してしまう場合もあります。

◆気になった記事がこちら

 前置きが長くなりました。久しぶりに気になる記事というか投稿に出会ったので、今日はそれを肴にして、前段の長いプロローグも考慮しながら思う所を整理しておきたいと思います。ちなみにこちらのポストは2016年の2月ですので約1年前のものです。

なぜネット専業のアドマンは「広告人」として育たないのか - 業界人間ベム

 こちらのブログの著者はデジタルマーケティング界隈、代理店筋では著名な方で、示唆に富む投稿が界隈で共有される事が多い方です。

 

●本記事の要旨を私なりに

  • マスやリアルのマーケティングを知らない人が増えている。ネット広告専業代理店の住人たちの広告人としてのスキルが育ってないのでは無いか? 
  • その責任はCPA至上主義で刈り取りを握らせるだけの広告主にもある。なぜなら広告人は広告主に育てられるものだから。
  • その点において、広告人が接しているのは広告主の担当者であって「マーケター」ではない。「マーケター」とは下記のような存在だから。

クリエイティブを中心としたコミュニケーションと商品開発力を含めたブランドマーケティングによる最適化を志向する

  • 説明が容易である為に傾倒しがちなCPA至上主義は、部分最適でしかなく、そこに求められるのは知恵や知見が求められる世界では無く、作業である。
  • その作業 ( = オペレーション ) に偏ったサービス提供しかできていない代理店側にも問題はある。課題がわからないクライアントにコンサルし、解決方法が分からない場合にプランニングだが、その能力が無い場合はその後の作業だけを担う事になる訳で、そこに付加価値は無い。

よく「マーケティングコミュニケーション」というけど、これはまさに読んで字のごとく、マーケティングとコミュニケーションがオーバーラップする部分に我々の仕事があるということだ。「コミュニケーションとは何か」の本質にアプローチできないで「広告」を語ることは出来ない。

 いやー、いいこと言われますね。

前半部分を広告主たるマーケター側の視点で読んでいくと依存しすぎじゃないですかね? と感じる部分はありますが、冒頭にも書いた事をここでもう一度持ってきますが、

 だけど、もし相対しているプランナーさんや営業さんが同じ尺度で物事を見てない場合、ディスカッションの内容が偏ったり、噛み合わなかったりというケースが出てきます。反対にこのあたりの「会話の合わせ」が上手な営業さんとに出会うと楽しい

 私の中にある漠然とした違和感を一年前に分かりやすく指摘してくれていました。(おまえ時々読みに行くくせに気がつかなかったのか、というのは無しで。。)

 前段で、担当クライアントのマーケティング課題に対する係り合い方の説明を相手に求めながら査定している、というやや不遜な物言いをしましたが、その時頭の中にはこんな感じの絵が浮かんでいます。

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説明しますと、

  • 前提として、Aで示されるような範囲の課題感を持っている。粒度、難易度などはバラついています。
  • 通常、代理店さんと会話する時は、求めているのがCだとしても、バックグラウンドとしてのBを念頭におきながら話をします。
  • その時に私が求めているのがDのような間口の広さがある人です。
    こちらが説明した背景に対して質問を受ける事で、Bの奥に広がるAに光が当たったり、気づきを貰えると嬉しくなります。そういうときに「良い質問ですね」となる訳です。
  • そのあたりをくすぐられつつ、Dのようなレンジで時に脱線しながらディスカッションする事で、固定化した視野がほぐされてCの精度が高くなるのが理想です。

 人さまの何かを支援するという事はサービス業です。そこに私が求めるのは顧客価値の方程式*1の実現です。
 つまり下式のようになります。

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 上式で言うところの「過程の品質」というのが、私の気にしている部分に該当します。「もたらした結果」は事前においては「ゴール」ですので、ここに共通理解が発生すのは簡単な話です。
 ところが「過程の品質」という点に関しては、各社・各人でバラつきが出やすい部分です。これは代理店や支援会社の場合もあれば、クライアントたる広告主がボンクラな場合もありますので、私は「相互理解に向けての歩み寄り」が基本にあると思っています。
 社内にも四半期に一度くらいのペースで媒体の営業担当や代理店のアカウンタントと思われる相手に対して電話でネチネチやっている人がいるのですが、傍で見ていて恥ずかしくなってきます。自分の仕切りの悪さを棚に上げて責任転嫁しているように見えてしまうからです。(本当は純粋に相手のミスかもしれませんが、そこは私の彼に対する認知バイアスという事で。)

◆結論としては

 という事で長々と書いてしまいましたが、

  • 代理店やマーケティング支援会社にブリーフするのは広告主やマーケターの仕事
  • そこでボタンの掛け違えがあると、後々取り返しのつかない事になる
  • だから違和感を感じたら止めて確認した方がいいんだよ
  • そうやって手間を惜しまず 「過程の品質」を一緒に作り上げましょう

 って感じです。なんか長い割に当たり前の結論ですが。そういう風に仕事していると「売り手」と「買い手」という垣根を超えて為になる人と出会えたり、環境が変わってもおつきあいが続くような人間関係が産まれる事を40過ぎて改めて実感しています。
 それが先に引用したブログ筆者が言う所の「広告主に育てられる」みたいな事にもどこか通じているのでは無いかな、と感じた次第。

 

*1:近藤隆雄「サービス・マーケティング [サービス商品の開発と顧客価値の創造]」生産性出版 2006年 P163を基に筆者加筆

山岳救助に何を求めるか? Play at your own risk!

雑記

 花粉も気になりだすこの頃ですが、今朝は綺麗な冬晴れ。この時期、我が家のベランダからは白い帽子をかぶった富士山が見えるのですが、雪化粧の山を見るとスキーに行きたくなります。

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 私は15歳でスキーを始めてからその虜になりまして、大学卒業後はその延長で北海道に引っ越してリゾートホテルで5年ちょっと働くという、ある種の引きこもり的な状況から社会人をスタートしています。
 人口7000人程度の寒村("町"ではありましたが)に住んで、雪山で仕事と生活をしていると色々とあります。骨折とか靭帯切れた、みたいな話は日常茶飯事とまでいいませんが普通で、残念な事に命を落とされる事故にも遭遇しました。
 私自身も自分のスキー技術の未熟さを棚に上げてオフピステで調子に乗って樹にぶつかったり、転んで口の中をザックリ切って二週間くらいスープだけで生活したり、木の根元に埋まって身動き取れなくなってしまったり、という経験をしています。
 ここ数年は日常に追われてスキーに行けてませんが、この頃の経験が刷り込まているので、冬山は怖いし油断すると命にかかわる事故や怪我に直結する、という事が割と染み込んでいる方だと思っています。ゲレンデの中と外は別世界なのですが、最近はオフピステの開放や未圧雪のコース、パークの設置など、ゲレンデの多様性が増えてきて楽しくなっているのでスキー復活しようと思っていますが、上記の原則は普遍だと思ってます。

 

❖違和感ある裁判

 昨年のニュースです。北海道のニュースはつい反応してしまう訳ですが、これは隊員さんがかわいそうだわ。

www.asahi.com

 昨年3月の二審判決によると、道警の山岳遭難救助隊が積丹岳で男性を発見したが、運ぶ途中に隊員が男性を滑落させた。男性はその後、凍死した状態で発見された。

 大切なご子息を亡くされた方のご心痛はいかばかりかと思います。
 争点は救助の過程で隊員に過失があったかどうか、という事なんですけれど、ここで真摯に向き合わないといけないのは隊員の過失の問題では無くて、そもそも救助が必要な事態に陥ったのは何故ですか? という点です。

 一方では、男性の登山における判断のミスも死亡原因につながったとしている。それは、
①登山当日、天気が崩れる可能性が高いと認識しながら山頂まで登山を敢行した
②冬季の積丹岳は天候の変化が早いことを知っていながら、天気予報を十分確認しなかった
③ビバークに適さない山頂付近でビバークした
④下山方向を誤った
⑤破れやすいツェルトによるビバークをしたため低体温症に罹患した
⑥雪庇に近い場所でビバークしたため救助隊員が雪庇を踏み抜く過失を誘発した 
 などである。

 頼んで冬山に入った訳ではなくて自らの意志で入ってますからね。その事の意味を考えないといけません。

その中でやはりこの部分は同意。

山岳で遭難した者の救助なるものは、もとよりそれが国民の権利自由を制限するものでもなければ義務を課すのでもなく、国民に対してなんらかの行為を強制するものでもないから、警察が実施する場合には、それは前述した「任意活動」に他ならない。このように、山岳遭難救助活動は、専ら警察の任意すなわち裁量により行なわれるものである以上、出動の要請を受けた警察が、これに応じて出動しあるいは救助をしなければならない法的義務を、負うものではないのである。

原告のポイントは以下の通りのようです。

原告代理人の市川守弘弁護士は、今回の訴訟について、最終的には道警の山岳遭難救助体制の在り方を問うものであるが、今回の救助隊の活動には、次のような初歩的ミスがあると指摘した。
① 遭難者のビバークしている位置を知らせるGPSのデータを読み違え、約1時間半にわたり違う場所を捜索した。
② 雪庇を踏みぬくという極めて素人的な過ちを犯している。
③ 斜面でソリを留めおくときに、落ちないように確実に確保する措置をとらなかったうえ現場を離れた。
④ 遭難者を乗せたそりが目の前を滑り落ちて行くのを見ながら、その跡をたどって救助活動に向かわず、全員が引き上げてしまった。

 もちろん、レスキューを生業とする人がその技術の練度を高めていく事は必要な事だと思います。だからこそ、上記のような事を責任追及するのであれば、同様に冬山に入る事の意味、求められる技量というものを本人にも求めるべきです。

❖国会沙汰になっていた

 調べていて驚いたのですが、この事故に関して国会質問まで行われていたという。知らなかった。時の総理大臣である麻生太郎氏が答弁に応じている訳ですが、スノーボーダーが山に入って遭難、救助隊出動するも悪天候とトラブルも重なって結果死亡、という不幸ではあるけれど、国政の場で質疑する話題かしら、とも感じる次第。

 質問は平成21年(2009年)2月25日に提出されていますので、同年2月2日に死亡が確認された事を考慮すると事故直後と言って差し支えはなさそうです。質問者は鉢呂吉雄元衆議院議員。どちらかと言うと左巻きですので、国家権力たる警察が係る事案については舌鋒鋭くなりがちなのかしら、という邪推はありますが、どんな質問をしたか興味がある方はこちらの衆議院のページの検索窓で、"積丹岳における山岳遭難事故に関する質問主意書"で検索して頂けると確認可能です。

 ただ、読みにくいページなので、質問と回答をひとまとめにしたファイルを作成しましたので、興味のある方はこちらでもどうぞ。

 

 

❖基本は自己責任 Play at your own risk

 遊び場であるスキー場の安全を守るためにパトロールの人たちは日夜活動しているし、警察などの自治体も研鑽しているのは事実なのだけど、それに甘えて「何かあったらお前が悪い」という甘えの構造を許してはいけないと思います。自分でリスクを引き受けて遊ぶからこその楽しさである事をいまいちど確認した上でアウトドアスポーツするべし。
 これからスノースポーツを始める人、自分は分かっている、と思っている人が読んでおいた方がよいものを見繕ってみましたのでご参考までに。

 

 ここ数年スキーから遠ざかり、サーフィンに寄っている生活ですが、海でおぼれたときにライフセーバーさんの場合はどんな感じでコンセンサスづくりに励んでいるのかを参考に引用した上で、アウトドアスポーツってのは基本は自己責任で楽しむ、という原則が厳格に守られてほしいと思います。

www.jla.gr.jp

  でもってライフセービング協会さんの良い所は、ウォーターレジャーの目的に併せて講座を設けて普及啓蒙を促進しているところです。

アカデミー・教育 | 特定非営利活動法人日本ライフセービング協会

 ウィンタースポーツもこのような体系的なカリキュラムを作り、スキー、ボード、登山といった係り合い方の別を問わない知識と技術の普及が進むといいな、と思います。