軽めの仕上がり (はてな編)

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(追記) 宅配便急増で大変 > 解決方法を考えてみた

 前回のポストで触れたヤマト運輸さんの件について追記です。

takao-chitose.hatenablog.com

 前回の投稿は要約すると「ヤマト運輸さんが荷物の増加ペースにドライバーが足りなくて大変なことになっているらしいけれど、特にアマゾンプライムの影響で再配達などのコスト負担も大きいらしい。さてどうしようか、という事で無責任にアイデアを出してみました」という内容です。

 そしたら3月2日の日経にこんな記事がでていました。

ヤマト、苦渋の転換 顧客志向の哲学は曲がり角 :日本経済新聞

 荷物の増加もさることながら、無料で再配達というサービス体系が収益を圧迫する要素になっている、という話です。これはその通りで、適当なタイミングで有料にすれば良い話だと思います。なんでもタダにするとサービス業に対する理解が進まず、消費者の質が低下する気がします。

 実際、総量抑制を企図した値上げや代替サービスの展開を予定している報道も出ていますので、関係する従業員の労働環境を改善しつつ、収益を維持する手立ては講じはじめているようです。このあたりのタイムリーな動きがあるので株価も大して下振れせずにもっているのかと思います。(今のところは) 

www.nikkei.com

❖時代の変化に適応するのは経営そのもの

 ハードウェア消費が中心の時代は機能を規定するのはメーカー側なので、いくら消費者から文句が出てもメーカー側のタイミングでコストを含めた機能改善をしていく事が(結果的にブランドが支持されるかどうかは別として)可能でした。
 ところがサービス消費が中心の時代においてはサービスの具体的な提供者が人か機械であるため、少なくとも人が関与する部分はサービスエージェントである人に積み込めるだけ機能を詰め込んでしまう傾向にあると思います。こうした流れは日本人の民族性なのかもしれませんが、私が典型的な例だと思うのがコンビニの店員です。彼らの覚える仕事量と作業スピード、そしてコンビニが持つ需要の振れ幅は極めて高いと思います。
 都心のセブンイレブンでは外国人従業員がほぼ確実にシフトに入っているような気がしますが、これはコンビニの店員をやりたい日本人が減っているというよりは、その仕事をこなせる日本人がそもそも減っているのでは無いか、と穿った見方をしてしまいます。なぜかというと、いくら人件費が日本人よりいくらか安いとしても、採用と教育のコストはむしろ日本人より高いはずなので、それでも外国人従業員が増えているという事は、そういう事なのかなと感じてしまうわけです。
 要は、労働を取り巻く課題ってのは日本国内の事象として捉えているだけでは潮流とか見誤るよなあ、という意識です。

❖当のアマゾンはどうしているのか

 話がだんだん広がりそうなのでアマゾンのシッピングのところに戻しますが、現実的にはアマゾンプライムのSLAがあるので、ロジスティクスを請け負うサードパーティーが消費者に再配達コストを請求することが出来ない可能性もあります。
 そうするとヤマト運輸さんが単体でそのコストを吸収していくしかないのか、という話になるのですが、交渉実らずアマゾンのSLAに適応するように修正するのかは外野には分かりません。価格に厳しいアマゾンがそう簡単に折れるとも思えませんが、日本のプライムは年額3900円 (2017年3月2日現在) で、アメリカだと年払いで$99です。為替を考えるとまだ価格差がありますので、このあたりの調整を通じて対応する可能性もあり得るでしょう。特に、ヤマトを利用する他の国内ECがヤマトの値上げを受け入れた場合はアマゾンも無視は出来ないでしょうし。

 で、そんな事態は先刻お見通しなのかどうかはわかりませんが、当のアマゾンは一方で自前のシッピング会社の構築も模索している模様です。

www.usatoday.com

 この報道は2016年4月のもので、その後大きな話題にもなっていないですが、フランスの物流会社の株を買い取る形でじわじわと手を広げています。報道に対して米のUPSは「大丈夫。パートナーとして良い関係を維持してますよ」てな談話を発しています。ヨーロッパ以外でも本国アメリカの地域レベルのパーセルサービスを買収するような観測も出ていることから同じことが日本で起きても不思議ではありません。
 例えば前回の投稿でも軽く触れた赤帽の買収とかどうでしょう。地域ハブまではヤマト、そこから先のラスト1マイルみたいな部分は赤帽改めアマ帽とか。

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 規模で比較する意味はないのですが、全国津々浦々をカバーする個人事業主の集合体である赤帽は買収候補としては筆頭になり得るのではないかと一人で興奮しています。故あって自由な働き方を求める人のオプションになるかもしれませんし。ちゃんとメンテすれば30年は走るとも言われる赤帽仕様のスバルサンバーでひと稼ぎというのは新しい就職先(個人事業主ですけどね) として検討されるべきかと。

  と、赤帽さんの話は半分冗談で書いていますが、アマゾンのAnnual Report のCompetitionの中にはこのような記載があります。

companies that provide fulfillment and logistics services for themselves or for third parties, whether online or offline;

 という事で、「オンラインかオフラインかは問わず、フルフィルメントやロジスティクスを自らないし外部のために提供している会社は競合です」と投資家の皆様に伝えている訳です。裏を返せば、ここで利害が一致しない場合は戦いますよ、という話です。

 メール便なきヤマトにとってはアマゾンが牽引するEC市場の成長軌道にうまく乗っていくのは必須だと思います。そしてアマゾンが新しい試みを持ち込めば、それを楽天が結構な確率で模倣してくると思いますので、二次的な市場の広がりも期待できるわけですから手放すべき市場ではありません。
 内部構造の転換と代替サービスによる顧客維持をバランスさせられるという期待をもって事の成り行きを見守りたいと思います。( 別にヤマトホールディングスの株主ではございませんが)