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アメリカ大統領選 : 塗り絵で理解する民意

 お前はどれだけ大統領選が好きなのだ? という感じで連投してますがこれで最後。

 前回の投稿で、過去20年の民主党 (青) vs 共産党 (赤)の陣取合戦の変遷を簡単に紹介しました。

takao-chitose.hatenablog.com

 今回は締めくくりです。11月10日現在ではWikiに上がってないので、今年の結果については細かくて評判の良いThe New York Timesのデータを基に追加してみました。

❖全体

 まだ、最終的な得票数になっていないようなので、改めてソースの確認が必要ではありますが、大勢は決したという事で2000年から並べてみました。共和→共和→民主→民主と来ての共和党政権復活という流れです。

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 ❖中部共和党ベルト ( Mid Republican Belt ) 

 アメリカの地域の呼び方として、バイブル・ベルト ( Bible Belt -- 聖書地帯) と呼ばれるエリアがあります。具体的には、中西部から南東部にかけてのエリアで、テキサス州、カンザス州、ヴァージニア州、フロリダ州北部のあたりを指していると言われてます。*1 

 この呼称自体は反プロテスタントの論者などから宗教に熱心な地域 (プロテスタントや原理主義的なキリスト教徒)を揶揄する場合にも用いられるので注意が必要な言葉ですが、今回、赤青の地図を時系列で眺めていて、このバイブル・ベルトとは異なるものの、共和党寄りである諸州がアメリカ中部地帯に多い事が再確認出来ました。

 その意味で、浅学にして学問的に正しい呼び方があるのか分かりませんが、ここでは勝手に「中部共和党ベルト ( Mid Republican Belt ) と名付けてみました。下図で赤点線で囲んでいるあたりのエリアを指します。1980年のカーターvsレーガンの時から変わらず共和党支持の州になります。

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 バイブルベルトと似たような感じで、沿岸部の自由主義陣営に対する保守層という位置取りで語られる事の多いエリアだと思っています。実際、アメリカの二面性 (月ロケットが作れるのに産まれた州から一度も出ない人も結構いる、という両極なところなど) を表していると思うのです。

 今回さんざん引用しているThe New York Times のデータの素晴らしい所で、各投票所レベルまで赤と青を分解してくれていますので、そこを見ると、少し違う風景も見えてきます。今回の選挙で民主から共和に変わったフロリダ、オハイオ、ペンシルバニアを例にして見てみると、このような具合。

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  小さすぎて分からないですかね。。。要は、州都と言われるような都市部においては民主党、その他の広範囲で共和党という色分けが認められます。これまで、沿岸部と内陸部、といったレベルで語られていた支持政党の違いが、個々の州内における都心部と地方においても同種の違いが存在する事がこのデータから確認出来ます。

❖Change from 2012

 こうした鞍替えした州の背景にあるものを理解する上で、これまたNYTのデータが素晴らしいので、そのまま加工させて頂いております。2012年の大統領選挙 (Obama vs Romney ) とからの民意の変化を可視化したものになります。(何度も書きますが元データはこちらでご確認ください。とても面白いです。) 

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 左側の地図は、2012年の時と比べて、民主から共和への変化を赤矢印、共和から民主 への変化を青矢印で示しています。俯瞰して明らかなのは右側で赤矢印が非常に濃くなっているのが見て取れます。 中部から東部にかけて共和党シフトが起きている事が確認できます。

 右側の地図は、2012時点でのLargest voter group です。ここでは学歴で色分けをしています。凡例が小さいので補足すると、

・青=White, no college ( 白人、単科大学未満)

・空色 = White, some college (白人、一部単科大卒)

・深緑■ = White, college degree (白人、単科大卒)

・ベージュ = Minority (マイノリティ)

という色分けです。

左側の地図と行ったり来たりしていると、明らかに低学歴の白人層が多い地域で民主から共和へのシフトが起きている事が体感できると思います。

❖最後に

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 陣取り地図で見る限りでは全体的に赤色に染まった今回の選挙ですが、ヒラリーさんは、votesの数では59,915,938 votes (47.7%)とトランプ氏の59,689,467 votes (47.5%)を上回っている事からも、それなりの支持は獲得していた訳ですね。それが積極的な選択か、反トランプという消極的な選択かは別として。

 ただ、大統領選挙という仕組みでは負けましたが、今回の選挙結果が示したのは国論を二分するような価値観の相違が確実に存在している事。そして、オバマの登場で巻き起こったある種の期待感に対する諦観も見られたこと。それが、いくつかの州で起きた鞍替えにも繋がっていると見ることも出来ると思っています。

 アメリカって国はとにかく馬力のある国ですので、自らが民主的に選んだリーダーを尊重して、どのように変化してくるのか楽しみです。

 エキセントリックな発言 (倫理的に問題はあるけれど、多くの発言は決して違法性があるものでは無かった) を現実の政治の舞台でどのように回収したり、修正してくるのかは見ものです。当選直後のコメントを読む限りでは、二期連続の大統領にも意欲が無い訳では無そうでしたので、トランプ大統領の打ち手にしばらくは一喜一憂してまいがちな日本ですが、そういうリアクティブな姿勢だとますます世界の潮流から置いていかれてしまいますので、遍くGDPに貢献している方は奮起しないといかんです。

 次に切ってくるカードをよく読むことは大事ですが、その為には自らがどうしたいのかの意志を持っておく事が欠かせないのです。(なんか最後に上手い事言った気分w)