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軽めの仕上がり (はてな編)

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SNS時代のダメージコントロール

今朝のニュース 組織

 三連休終了。終わりそうで終わらなかった選書をやっと読み終えたところで、このところ飛ばし読みばかりしていた日経MJを捨てる前にじっくりと読み直していたところ気になる記事。

 日経MJは『流通新聞』の時代からずっと購読していて、最近では面識ある方のコラムなども出ていて勉強になるのですが、7/18号の一面に出ていた「SNS時代のダメージコントロール」という記事にちょっと引っかかるものがあったので、その事について書き留めておきます。

※Marketing Journal なのにデジタル版が日経MJには無いので紙面の絵を参考に。↓

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記事の主旨

この記事の主旨としては、概ね以下の内容。

  • 企業を取り巻く不祥事が発生した時に、初動を間違えると炎上が拡大して延焼していく事が今の時代の特徴。
  • こうした炎上→延焼は企業活動に限らず、政治、芸能といった様々な分野で頻発している。
  • 素早く対応して(火消して)延焼を防ぎ、信頼を回復するダメージコントロールがとても重要。
  • 沈静化のポイントは、以下の3つをすばやく消費者に伝える事。
  1. 謝罪
  2. 原因究明
  3. 再発防止策や補償
  • その為に記者会見がとても重要だが、お辞儀や服装といったテクニックよりも、「なぜ謝罪が必要か、何か問題かを誠意をもって説明する事が大切」との事。
  • 企業の論理を振りかざしたり、想定問答集的に振る舞ってしまうのは逆効果になる可能性もある。

 といった所が勘所で、煎じ詰めると「会見時点で世論を捉えておくことが大切」(広報会議森下編集長) という事になります。

 以下、記事中では、「こんな対応はNG」という事で、SNS口コミの軽視やリスク要因の把握不足、責任転嫁発言、初動まで時間かかりすぎ、等の駄目なポイントが三菱自動車と舛添元都知事の会見の写真を下敷きにして整理されています。

 書かれている事はまさにその通りで、一息ついて見ればその通りだけど、火中にいる時は見落としがちだよな、という事だらけでした。

気になった所

 で、この記事中、危機管理コンサルタントの白井さんという方が、ブランドの毀損や売り上げ減などの損害を最小限に抑えるのが『ダメージコントロール』と説明されていて、そこで最も重要なのが既に触れた初動だそうです。曰く 、

2ヵ月後に「そう言えばそんなこともあったね」と世間がなっていればよい

というコメントがありました。

 確かにその通りなのだと思います。

 「人の噂も七十五日」とか「喉元過ぎれば熱さを忘れる」といった人の感心のうつろいやすさを言い表した諺もあるくらいですので、「入り方」を大きく間違えなければやがて沈静化するというのは経験則的には正解だろうな、と思います。

 ただし、ですよ。「初動をしっかりやって延焼防げば万事OK」では無いと思うのですが、そのあたりの言及が無かったので、そこが少し気になる記事でした。

 不祥事には、それに至る背景や原因がある訳で、それらは「一過性の火災を予防す事」と同義で考えてはいけません。むしろ、騒ぎ自体は早急に鎮静化させた上で、本質的な問題の解決(これは大抵の場合は外的要因では無く組織内部にあるはず)に取り組むことが企業には必要でしょう。

 実際、記事で紹介されている広報会議がまとめた2015年のワースト謝罪ランキング(怖いわぁ)に発覚年度を加えたのが以下。

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                 ・広報会議がまとめた2015年ワースト謝罪ランキングを基に筆者作成
                      ・マクドナルドに関しては、日本国内の事例を基準とした。

  上記ワースト10の内、「世間話」というタイプにしたのは個人の生活には直接関係しないだろう不祥事。東芝に関しては安易にそうとは言い切れないが、直接的に影響を受ける個人は同社関係者と投資家に限定されるのではないか、という意味で「世間的」としている。その他の「自分事」に分類したものは 、一歩間違えば自分も被害者になっていた可能性があるものである。※あくまで主観ですので。 

本当に2ヶ月後に風化していればいいんだっけ? 

 ここで今一度、損害を最小限に抑えるダメージコントロールの勘所が初動にあり、2ヶ月後にある程度風化していればひとまずOK、という部分に立ち返ります。そのこと自体は今の時代感覚的には正しいと思いますが、ここに名前が出ている企業の履歴を紐解くと、違う視点も出てきます。

  • 東芝
    50.1%出資の子会社である東芝機械株式会社が1987年に「東芝機械ココム違反事件」を引き起こし、日米間の政治マターにまで発展している
  • 年金機構
    2013年の「10億円未払い隠匿事件」、2010年の「社会保険庁OB官製談合事件」という先行事案がある
  • 大塚家具
    久美子社長の解任そのものは2014年の7月。ここで事案として指摘されているお家騒動の遠因となった経営方針の対立は、2009年3月の株主総会で久美子氏が社長に昇格して以降に顕在化している。
  • 東洋ゴム工業
    2007年11月に断熱パネルの性能偽装、2015年10月には防振ゴムの性能データ改ざん、という問題を引き起こしているほか、2010年10月に無許可業者への産廃処理委託という問題も起こしている。
  • タカタ
    2008年ころより重要部品である、膨張ガスを発生させるインフレーター関連の不具合が相次いで判明、米国とマレーシアでは破裂したインフレーターの金属片により死亡事故も起きている。

 つまり、企業として不祥事が明るみに出る事が「噴火」だとしたら、その下のマグマは時間的にはかなり前の段階から蓄積していたり、表面化している事が理解できます。こうした企業が内包する企業文化やモラルの問題についてはここで言及するつもりはないのですが、初動によって「吹き出たマグマに蓋をした」としても、物事の本質的解決には至らない事はこうした事実からも明らかです。 

記事を基にすこし考えたした部分

 という事で、マーケティングコミュニケーションを生業とする者としては、いわば初動という短期的な対策だけでは無く、自社に内在する根源的な企業文化や倫理観といったものを客観視して、最悪の事態に備えておく事もまた重要だな、と再確認した次第。特に以下のような部分。

 

  •  日常的な企業イメージやコンテクストの把握により自社の「ネガ要因」を把握
  • 先行事例を基にした不祥事シナリオのシミュレーション作成
  • 社長以外のスポークスパーソンの育成
  • 燃料投下の蛇口或は水門となるSNSアカウントのガバナンス強化

 

といった日常の足腰づくりが必須科目だな、と。

 起きてほしくない事態だからといって避けていてはリスク管理とは言えないので、避難訓練よろしく「ある日突然問題発生しました」ぐらいのドリルをやるぐらいの事をしておかないと不必要な延焼でダメージをより深めてしまう可能性が高い時代だよな、と思うのであります。

余談

 この日経MJの記事で下敷きにされている舛添都知事の辞任と三菱自動車の謝罪会見は2016年のものでして、最近の事例でインパクトがあったもの、という意味しか無いのでしょうが、こと三菱自動車に関しては根深い隠ぺい体質が過去にも指摘されていて、「不祥事といえば」という感じで想起されがちなレベルになっているのが悲しい限りです。軽く調べた限りですが、主だったものを列挙すると以下の通り。

  • 2000年7月 リコール隠し
  • 2004年3月 三菱ふそうで二度目のリコール隠し
  • 2004年6月 三菱自動車工業が乗用車でヤミ改修があった事を公表。同月新たに43件のリコールを発表
  • 2010年~2012年にかけて4回にわたり、軽自動車エンジンのオイル漏れ不具合に関して120万件のリコール。ちなみに不具合の把握は2005年に遡る
  • 2016年4月 軽自動車の燃費改ざん問題発覚

 もう、ここまで来ると構造的に駄目な感じしかしません。オリンピック並みの頻度で何かしら問題が起きている訳ですから。経営陣という脳みそだけでなく、細胞である従業員全てが結局、どこかで無関心だったり他人事だったりしたとしか思えません。

 こういう事言うと、「全くかかわりが無い末端の従業員もいる」みたいな意見も出るのですが、申し訳ないけど分別盛りの大人が集まって活動している企業においてここまで悪化している場合は経営陣だけテコ入れしたところで解決するとは到底思えません。(だからといって経営陣に責任が無いという話ではもちろんありません) 

 本当、企業のコンプライアンス教育って大切だわ。その点、口うるさい外資系生活が長いので、こういう企業と比べるとはるかに厳格な環境で働いているのだなあ、と思います。