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軽めの仕上がり (はてな編)

Curiosity is the most powerful thing you own.

2017年のデジタルマーケティング展望 ( 後編:私の見立てを5つ)

時事考 Marketing

 前編の「ふり返り」編が予定より長文になってしまったので、後編はなるべくコンパクトにまとめたいと思います。

takao-chitose.hatenablog.com


 タイトルに「私の見立て」とか「展望」とか入れてて我ながら恥ずかしいのですが、前編と後編でタイトル変える訳にも行きませんし、そもそも自分の影響力は半径1mくらいで面と向かって会話している時ぐらいでしか発揮されませんので問題無し。あくまでも私が勝手に思弁している炬燵レベルの話、という事で7割引きくらいで読んで頂ければ幸いです。

❖前編のサマリー

 前編では、2016年の2月に投稿した「海外メディアの2016 Digital Marketing Topic 予測まとめ」*1の中で紹介した海外のメディアやエージェンシーが示している2016年の展望に対して、彼ら自身が何かしらのレビューやふり返りをしたのか、というところを検証しつつ、私の感じた「それら予想に対する実感」をまとめました。

 結果としてほとんどのサイトはふり返っていないという事に軽い失望を感じつつ、「2017年も継続してウォッチする価値があるサイト」が絞込めたのは良かったと思っています。

 さて、2017年の展望として、前編ではキーワードだけ提示しましたが、後編では少し掘り下げて、「なぜそう思うのか」という理由を自分の言葉で説明したいと思います。ちなみに私の展望は以下の5つです。 

  1. デジタルマーケティングという言葉の陳腐化が始まる
  2. マーケティング職の分化が進む (オールラウンダーとニッチ)
  3. マーケティングオートメーションがもたらすチャネルコンフリクトの顕在化
  4. データハンドリングの困難さが際立つ
  5. B2Bにおけるダイレクト化、B2Cにおけるソーシャル起点の加速

 それぞれについて突っこんで書いたら安めの修士論文くらいのボリュウムにはなりそうな予感がしますので、なるべく「なんでそう思うのか」だけに絞っていきたいと思います。が、自信はありません。
 では順番に見て行きましょう。 

❖私の見ている2017年のマーケティング界隈の風景

1.デジタルマーケティングという言葉の陳腐化

 これはカスタマージャーニーやタッチポイントの多様性と、そこで得られる接点情報の活用という課題に対して 、デジタルマーケティングの話題でも中心的な存在であるマーケティングテクノロジーに対する期待値の高さを考えると違和感があるかもしれません。

    もちろんこうしたテクノロジーが今後のマーケティングにおいて重要な役割を果たす事に違いはありませんが、多様化を前提とした場合に消費者の充足感を究極に引き出そうとすると、行き着くところは「財のパーソナライゼーション」になると考えているからです。財のみならず、顧客が体験する一連の過程におけるパーソナライズの深化と言う競争軸はこれからも先鋭化すると考えています。
 この考え方におけるポイントは「一個人に対するパーソナライズ」だけでは無いという点です。複数人のグループ、数十から数百名程度の「小さなセグメント」に対してベストフィットするような経験価値の提供が大切になる、という事です。
 一番類似するのはライブやフェスですが、もう少し小規模。当事者の間での知覚差異は少ないイメージ。
 例えばスノーピークさんがやっている雪峰祭(せっぽうさい)、よなよなエールさんの超宴、若桜鉄道「隼駅を守る会」が主催する隼駅まつりなど。これらのイベント、「雪峰祭」は2000年から、「超宴」は下地となる同社の別イベント「宴」が今年の9月で27回目を数えますし、隼駅まつりは2016年に8回目という事で、昨日今日始めたものでは無いのですが、共通しているのは単一の商品の体験では無く、その商品をトリガーにして産まれるライフスタイルや価値観といった経験価値を提供している事です。そのイベント会場で小商いをする事は目的ではなく、お客さんが楽しめるものである事、Pride to Ownを感じることができるような機会を企業が用意している事です。ここが「自分達が伝えたい事を濃い目のお客さんに発信する場」という下心満載のイベントとの決定的な違いです。
 こうした取組みは、相対的にマーケットシェアが小さいブランドやニッチなブランドにおいてはある種のゲリラ戦、又は囲い込み戦術として古くから存在していましたが、「好きな人の集まり」から「価値観を共有する人の集まり」に昇華できたブランドについては市場におけるプレゼンスが増してきているのだと感じています。時代感覚的にも「時間と共有した経験 > お金と所有」みたいな価値観があると思っていて、イングレスの流行もこうした文脈で捉えています。
 ここで言いたいのは、この様な共創を具現化する取組みの重要性を考えた場合、デジタルかオフラインかという二項対立は無意味です。デジタルマーケティングだけを別物のように扱うのはいい加減やめた方がいい頃合いですね、という話です。

 

2.マーケティング職の分化

 これは1の延長線の話です。
 このような動きをある程度の規模の組織で展開しようとした場合、デジタルマーケティング、マーコム、広報といった機能分化した体制は非効率だ、という意味です。

     ベンチャーや小規模な会社では当たり前のように「ひとり三役」みたいな事が発生しますが、多分、そういう風に見てしまうのは自分が既に分業化された組織に浸かっているからです。当事者にしてみれば「私はひとり〇役」とかいちいち考えているよりも、「やらなければならない事」にフォーカスしているケースが多いと思います。実際、私もかつて数十人の会社で働いている時はそうでした。
 これは機能分化したマーケティング組織が悪いという話では必ずしも無くて、機能分化するほどにサイロが強くなってしまい、一貫性の無いマーケテイングに陥ったり、全社横断的な取り組みに際して社内調整に多くの労力を割いてしまう事がよくあるチャレンジだからです。これらに共通するのは顧客や市場から遠いところに対して多くの時間と労力を使わなければならない、という点です。
 かといって、X-MENのマグニートーのような人ばかりでは無いので、組織として対処してくことを前提にすると、どんな風に組織をデザインする事が必要なのかという事がここでのポイントです。求められるマーケテイング実務能力という観点で考えた場合、そこに対する私案は次の二種類に分かれると思います。

  • 定型・非定型なデータを構造化して、そこにマーケットと顧客のインサイトを組み合わせてマクロとミクロの両側面から現象を説明したり、それを徹底的にオペレーションに落とし込めるようなスペシャリスト型
  • そういった定性・定量のデータとインサイトとそもそものブランドの方向性に基づいて、自身の観察力と嗅覚でマーケティング活動全体の方向性、あるいは顧客セグメント単位でのアプローチやコンテクストがチャネル施策も含めて設計できるオールラウンダー型

 上記の二つの型は新しいものではありません。一般的にマーケティング担当者に求められる能力ですが、書き方を少し変えてみただけです。ただ、この2つを実現しようとすると、細かく機能分化した組織であるほど「組織の垣根を跨いでしまう」、「内製(インハウス)と外注(アウトソース) の垣根を跨ぐ」状態になるのではないかな、と思います。

 これら二つのマーケターの上に立つのがいわゆるディレクションを担う役割の人ですが、二種類の型をオーケストレーションしてマネタイズする能力が必須となります。こうしたトライアングルのマーケティング組織が機能するんじゃないかな、と、ここ最近の流れの中で感じています。

 

3.MAがもちらすチャネルコンフリクトの顕在化

 ここから少し各論に入ります。
 DTC(Direct to Consumer) という医薬品業界特有のワードがありますが、2016年は一般のブランドやリテール業界のForm 10-Kを読んでいる時にも目にする機会が増えてきたと思います*2
 リテールにおいてはアマゾンを筆頭にe-retailやECの台頭により、これまでの流通業としては、

  • スケールで戦うには消耗戦が待つばかり
  • 資源という意味ではメーカーやブランドに帰属するので手薄
  • End to End のブランド体験の提供は不可能

なので、2017年もPOP (購買時点)における専門性や付加価値提案という古くて新しい領域で小さな差別化を図るのが主たる戦略オプションになるかな、と見ています。もちろん、位置情報などを活用してデジタルとの融合を図る事は可能ですが、カスタマージャーニーの上流に行くほどリテールとしての立ち位置に踏み込む事にもなるので難しい課題だと感じてます。

 一方のマーケティングオートメーション(MA)に関してはある種の幻想も少し落ちついて、B2Bの領域においては2016年はABM ( Account Based Marketing ) などが主張されていました。もともとBusiness Marketing というのは「顧客=市場」と考えるのが前提ですので、その概念を踏まえている人からみると今さら当たり前の事に立ち戻っているようにも見えますが、その「当たり前」を支援するアーキテクチャとしてのMA活用を捉えていくのであれば良い流れだと思います。

 コンシューマ領域においても、CRM(購入者)、ソーシャル、アドテク、という3つのドメインで獲得しているアテンションやエンゲージメントをどのように循環あるいは連環させていくか、という課題は共通する部分だと思います。その意味で、2で言及したオーケストレーション出来る人がリードするトライアングル型のチームの重要性が高まるだろう、という事につながっています。
 何故かというと、そういうビックピクチャーは会議で合議するよりは、既に絵があるストラテジストやディレクターに信じて、time to marketを重視する事が重要だと考えるからです。計画ほ完全にロックしてからスタートするのでは無くて、会社全体のvalue streamから大きく逸脱していなければ、「先ずやってみる」= " Fail Fast, Learn a lot " が組織的に可能である事が重要と見ているからです。
 このような編成でものごとを進める場合、チャネルコンフリクトは避けられません。End to End のカスタマージャーニーを貫徹しようとする行為はチャネルをコントロールする事も含むからです。旧来のチャネルコンフリクトは、メーカーと流通のどちらが主導権を握るかという視点ですが、これからは消費者をもチャネルの一部と考える事が必要です。これ、すごく傲岸不遜な書き方ですが、客観的に見て「End to End のカスタマージャーニー」という時、購買後のユーザーの振る舞いが非常に大きな影響力を持っている事を考えれば、的外れとは言えないと思います。

 このあたりの動きは米国NikeとAdidas の戦いを観察していると感じる所がありますので、2017年はこの2社の比較も時折してみて自説の検証などもしてみたいと思います。

 

4.データハンドリングの困難さが際立つ

 これもやや実務的な話。
 実際、どこにどんなデータがあるかは分かっているけど、結合するのが一苦労というのは良くある話だと思います。ましてやビジネスがグローバルに展開している場合は、法律的側面(データの帰属) やプライバシーに対する考え方、組織内においては過去のシステムからの呪縛、属人化したデータ管理、シャドーIT等々、法文化の領域から情報システムに至るまで多岐にわたる要因が絡まっている事が現実には多いのではないかと思います。それだけに、カスタマージャーニー全域にわたるデータに対してガバナンスを効かせて主権を行使できる企業というのは少ないのでは無いかと思います。
 可能性があるのは垂直流通である自動車産業ですが、少なくとも日本においては「若者は自動車に乗らない」という言説が世相を語るテンプレみたいになっているくらいなので、今後の特定の年代における免許取得人口比率*3 やカーシェアリング市場の成長といったもので傍証出来るかと思います。

 これは煎じ詰めると、ここ10年くらい私の頭にこびりついている「顧客や市場を起点にしたグローバル経営」というテーマにも通じてきそうな気がするので、広がりすぎないようにしてこの辺で止めておきます。

 

5.B2Bにおけるダイレクト化、B2Cにおけるソーシャル起点の加速

 B2B (Business Marketing) においてはMAはまだ普及過程ですが、その実態としてはCRM的な視点でのe-mailに毛が生えたものから、カスタマージャーニーに合ったデジタルタッチポイントに対するトリガーとしてのe-mailにシフトしていくものと思っています。
 一方で、B2Bではdigital Nurture → In Person Activity → Pipeline生成というバトンリレーが一つのパターンになっていると思います。これは具体的には、e-mailやwebinar,Ad networkを通じたシンジケーションによりナーチャリングを進めつつ、 セールスステージの変わり目を掴む場としてのイベント、その後のインサイドセールスによるエンゲージ目的の架電というIn Person な活動をデジタルナーチャリングの後工程として配置するパターンが一般的だと思えるからです。*4
 これは法人向けのマーケティングの特性として理解できます。組織購買を決定するのはエモーショナルな部分ではありません。裏返すと「その企業が買うべきタイミングで買う」のがBusiness Marketing における購買行動の基本形です。そのタイミングを売り手がコントロールするのは困難ですので、顧客が発するパルスを見逃さないようにする為にMAで「保温」しておく顧客やターゲットと、人的資源を投下して「決裁」に進めるチャージするべきターゲットを選別出来れば全体最適に一歩近づきます。つまり、セールとマーケティングの融合が進む事になるのですが、これが最も進んでいるのがダイレクトビジネスの世界です。
 そういう意味で、B2Bのダイレクト化、デジタル化というのがより重要になるだろう、という見立てになります。ダイレクトビジネスはチャネルビジネスやパートナービジネスと比べて内部資源の質が成果に直結しますので、マーケティング職からセールス職へ転じるようなケースも今後は増えてくるのではないでしょうか。

  一方のコンシューマにおけるソーシャル起点ですが、既に1の「デジタルマーケティングという言葉の陳腐化が始まる」でも含んでいるのですが、企業と顧客の関係が「商品」から「価値観」といったものに軸足を移しているというのが私の感覚です。故に個人の価値観が伝播する場としてのSNSがマーケテイングにおいて主戦場である事は自明です。マーケティング部門としては、SNSの世界で織りなす伝播をモニタリングしつつ、優位な流れを加速させる為にどのようにマスメディアを巻き込むか、といった視点で設計するのが妥当と考えています。その場合、テレビであればブロードキャストされる事が強みでもあり弱みでもありますので、せっかくの盛り上がりに水を差さないように「買い方」と「使い方」には神経を使う事になります。
 いずれにしても、これまで絆、共感、協創といった言葉で言われている事の延長線ではありますが 、小さい塊をたくさん作ってインサイドアウトでそこから広げていく方が、ばら撒いて刈り取るアウトサイドインのような手法よりは長期的な成果という意味では適しているのかな、と考えています。

 

 ❖むすびにかえて

  上記の見立ては私が個人的に関心を寄せている事ですので、予測として当たっても外れても自らの日常の中で重視していきたいと考えています。
 ビジネスパーソンとしてはダイレクトビジネスが楽しいし、マーケティング的にも得るものが多いと考えているのですが、だからといって店舗を軽視している訳ではありません。ターゲティングにおいてテレビのGRPは非効率という見方がある一方で、ではデジタル広告の桁違いのインプレッションは何なのか、という疑問も成立する訳です。
 Comapny, Channel, Customer という3つのCがどのように連環していくのが良いのか、その三者における「三方よし」は成立するのか、という事がグローバルマーケテイングのベストプラクティスを説明する為の材料としてここ2-3年強い関心事項です。その意味で2017年からはオムニチャネルの部分をもう少し勉強して*5「作る・届ける・使う・語る」という4つのピボットで物事を見て行きたいと考えています。
 いずれにしても購入という行為はオンライン ( すなわちキャッシュレス) がマーケティングROI的には最も効率が良く、生活者にとっても利便性の点で軍配が上がる財のカテゴリが増えていると思います。一方で 、流行っているリテールがあるのも事実。語義としての「小売り」に留まらずに「より深化したアソートメントの提供」が出来ているかどうかを生活者の嗅覚はかぎ分けているのだと思います。リテール自身が目的地としてのマインドシェアを獲得しないと都心部では難しいでしょうし、違う意味で目的地化していた地方のイオンなどのショッピングモールはさらに厳しい戦いになるのではなかろうかと愚考しているところです。最近、田舎のイオンを観察していないので、正月に名古屋で見てこようと思っています。


以上、短くしたいと言いつつ後編も7000文字オーバーになってしまいました。
みなさまどうぞ良いお年をお迎えください。

※2017/1/10 文意を明確にする為に一部加筆修正

*1:海外メディアの2016 Digital Marketing Topic 予測まとめ - 軽めの仕上がり (はてな編)

*2:定量的に調べてないので感覚です

*3:20歳で免許持っている人の割合など。総人口が減っていくので絶対数で比較すると見誤る。

*4:少なくとも筆者の帰属しているITC業界においては、という話です

*5:話題のピークを過ぎてから腰が入る事が多い性格です

2017年のデジタルマーケティング展望 ( 前編:2016年のふり返り)

時事考 Marketing

 クリスマスも終わりいよいよ今年も残すところあとわずかとなりました。という事で一年をふり返り、来年を展望する投稿を頑張って年内に書き上げたいと思います。

 前編となる今回は「2016年のふりかえり」です。※年末で色々と書きたい事がありすぎて、いつもより長いです。

❖2016年は何が盛り上がる予定だったか覚えてます?

 今年2月の下記投稿で2016年のデジタルマーケティング界隈のトレンドについて欧米メディアの予想を横並びにして比べてみました。性格の悪い私はこういうものを見直すことが大好きなので、各社に対して悪意は1ビットもありませんが、一年の締めくくりとしてレビューした上で年越しを迎えたいと思います。

今年の一月の投稿はこちら。

takao-chitose.hatenablog.com

 いちいち読み直してもらうのも難ですので、2016年に中心となるであろうトピックの中で各社の予測を横並びにしたもの再掲しておきます。

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/takao_chitose/20160201/20160201113853.jpg

 7社のサイトを横断して、各社が掲げる予想を列記しています。少ないメディアで4つ、多いメディアで10個の予想を立てています。上記項目を私の観点で見直す前に、各社が自らの予測を振り返っているかどうかをまず確認してみたいと思います。

 少なくとも日本国内的にはメディア事業者の倫理観やコンプライアンス意識の弱さが改めて問われた一年だったと思いますが、上記のグローバルに発信しているメディアさんは果たして自らの予想を振り返っているのかどうか。メディアとしての矜持が問われる瞬間です。

❖各社のふり返り状況
  1. Search Engine Journal→ふり返りなし
     サイト内を調べた限りでは、同様の粒度でのふり返りはありませんでした。既に、Search Marketing: What To Expect in 2017 | SEJといった予測記事が出ています。GoogleやBingといったサーチサービスごとでの「今年の整理」のような投稿はありましたが、対応するものが無いので減点です。
  2. Smart Insights→ふり返りなし
     こちらもふり返りは無し。The Top 3 Marketing Trends for 2017 - Smart Insights Digital Marketing Advice といった予測は出しています。2016年は10個も選んでいましたが、2017は3つに絞っています。また、Social Media や Ecommerceなどカテゴリを絞って予測を出しているあたりが昨年との違いとして確認出来ます。ふり返りをしていないのは減点ですが、このサイトはLibrary やテンプレなどを気前よく配布しているので (プロファイルは取られますが) 良しとします。
  3. NewMediaDigital→ふり返りなし
     デジタルサービスのエージェンシーです。特別メジャーな会社でも無いですが、2016年の見通しが6つBlogに出ていて筋が良いと感じたので取り上げてみました。が、ですよ。今、久しぶりにblogを確認したところ、ふり返りは無く、ついでに2017年の見通しもありませんでした。事実としては2016年の予測を出してからこの一年の間に5つしかポストしていないようです。これはやや期待外れ。
  4. Business 2 Community→少しだけあり
     こちらのサイトも情報量が多く、役に立つe-book等のツール類をプロファイルと引き換えですが入手可能な良質なサイトです。トレンド系の記事で目につくのは2017年に向けたものがいくつか見当たりますが、一つだけ、2017年を展望する為に2016年を簡単にふり返っている記事がありました。と思ったら正しくは、記事では無くてスポンサードでしたので、そこが惜しい気もしますが内容は悪くないので良しにします。

    www.business2community.com

  5. Commcreative→ふり返りどころか。。。
     こらちはクリエイティブショップですので、情報量というよりは自社独自の視点で深い提言を出していくのが特性ですが、なんと2016年の予測記事は削除されていました。別に当たり外れなんて誰も気にしないから消さなくてもいいのにどうしたんでしょうか。残念。 Inc. が選ぶFastest Growth Company 5000にも選出されているので、会社そのものは成長過程なのだと思いますが、よりクリエイティブに寄ってきているようなWebの作りですので、トレンド予測というよりは自らの美学や視点で勝負、という事なのかもしれません。

  6. digital information world→斜め上の展開
     Infographicや具体例を出しながらWeb Design Trend を解説したりしてくれるので、デジタルマーケティング領域の中であまり得意じゃない or 関心が低いものが取り上げられている場合はリファレンスとして有効で、EvernoteやOnenoteに保存しておくと後で便利な事があるサイトです。2016年の振りかえりと呼ぶにはまだ早い8月25日に、

    www.digitalinformationworld.com

    といった記事を掲載しています。もともとこのサイトの予測は以下のようなものでした。

    f:id:takao_chitose:20161227003459p:plain

     これに対して、8月の時点ではこのような感じでした。2015年12月に出た2016年の展望とこの8月に出た2016-17にかけての展望では執筆者が異なりますので、書き手の変節という訳ではありませんが、同じ媒体としての共通点はコンテンツとビデオであるという事は伝わってきます。

    f:id:takao_chitose:20161227004006p:plain

     自らの予測のふりかえりでは無いですが、年の途中で新しい展望を持ってくるあたりは『占いの精度を確認するより、もう一回占ってみるのがよかろう』という意味で嫌いでは無いです。

  7. Entrepreneur→ふり返りあり
     その名の通り、アントレプレナー向けのサイトですが、なかなか肉厚なサイトでして、発信力は相当高いです。そして、ここへ来てやっと振り返りに近い記事が一つ出てきました。

    www.entrepreneur.com

    いやー、良心を感じます。記事の主旨は2017に向けた展望ですが、前段として今年浮き彫りになった課題をいくつかピックアップしています。例えば
    ・Ad Fraud が未だ大きな問題である事
    ・data driven marketing の前にdata collectionでスタックしている事
    ・Marketing Software が決して使いやすいものでは無い事
    などです。フィールドでマーケティングに取り組む側の視点で見ても「そうだよね、分かる!」と同意できる良い記事でした。詳しくは上記リンクをぜひ読んでください。
     このサイトに敢えて苦言を呈するならば、「〇〇の為の5つの△△」みたいな記事が多い事。実際、このサイトには10個程度の起業家向けに必用なセクションがあって、私は主にMarketing と Social Media を読むのですが、Marketingの1ページ目を上から眺めただけでこんな感じです。全部でいくつ覚えればいいんだよ、という感じ。

4 Strategies to Boost Customer Loyalty
8 Steps to Get Your Product Successfully Reviewed by an Influencer
6 Ways to Go Mainstream and Develop Your Brand
20 Ways to Grow Your YouTube Live Audience
4 Keys to a Stable Business
5 Tips for Growing Your Small Business This Holiday Season

 ❖各社が最も重要視していたトレンドに関して 

 2016年の予想として各社が1位に記載していたのが以下のトピックでした。トップはContent Marketing で3つのサイトがトップ事項として予測していました。

  • Social Ads
  • Seamless Customer Experience
  • Content Marketing x 3
  • More Video Ads
  • Mobile Surpasses Desktop

上から順番に自分の経験と照らし合わせると、一番下の"Mobile Surpasses Desktop" 以外は実感ありです。

  • Social Ads
    Facebook広告における個人の実態に即したターゲティング機能の向上はフルファネルでのマーケティングコミュニケーションにおいて強力な武器になり得る事と、ある意味GDNなどとカニばらないので、この二つを軸に後は補完材料みたいに使うといった型が作りやすくなりつつある。
    ・また、Instagramにおいては未だに場違いな広告も散見されるものの、ファッションや高価格帯の耐久消費財などのクライアントの広告は結果的にネイティブ広告レベルに馴染んでいるものも見かけるので、メディアとしてのFacebookの「集金力」は今しばらく強いポジションが続くと見ています。
    ・日本においてはLINEが6月に運用型広告を開始するなど、シェアのあるアプリやサービスがプラットフォームとして機能し始めている点が見逃せません。ゲームと広告とスタンプで食っている会社ですので、後はアジアにどこまで浸透できるかにより、日本企業にとってもAsia Pacific を意識したマーケティング活動に役立つプラットフォームになる可能性はあります。

  • Seamless Customer Experience
     特にコンシューマ領域においては、ここ数年のホットトピックであるオムニチャネルの発達に加えて、フィンテックに象徴される決済の多様化、といったトレンドが重なる事で、お客様が違和感なくブランド経験或は購買経験が出来るように「仕組み」を整える機運が高まっていると思います。
     決してデジタルだけでは完結しない話ですので、いきおい全社的、あるいは商流そのものにまで踏み込むような大きな話になるケースもありますし、その過程で3PLのサービスレベルに依存するような極論も社会的に関心を呼ぶような事案も発生しているようです。マーケティング部門がバリューチェーン全体に対する視野を持つことが求められるケースも今後は増えていきそうです。

  • Content Marketing x 3
     B2Bにおいて顕著だと思います。顧客都合で購買サイクルや内容が決まるBusiness Marketingにおいては、一年のある特定期間のキャンペーンという売り手都合の施策では購買などのアクションにつながらない見込み顧客は多数存在します。
     Marketing Automation の普及は、この無駄を将来の養分に変えていく機会として活かす手段としての期待値が高いからです。その際に大切なのは、顧客とのコンテクストに応じたコンテンツの提供です。これは小売業で考えれば店頭のアソートメントと同質的なものと言えるでしょう。
     たまにコンテンツマーケティングというものを「面白い」とか「バズる」といった意味合いで捉えているジュニアな方がいますが、本質はそこでは無いです。このContext 理解、Contents提供, Customer Journeyの設計、という3つのCは非常に重要な組み合わせだと思っとります。

  • More Video Ads
     TVというメディアが広告媒体としては没落しつつある中で、動画自体のニーズはむしろ高まり続けていると思います。私の中では、「動画はシャワー、静止画は湯船」みたいな関係です。なんじゃそりゃ、ですね。
     伝える情報量や印象など、静止画と動画は特性が違いますので、使い分けが大事ですよ、と。その時にそれぞれに何を求めるかの隠喩がシャワーと湯船になります。熱くて勢いのあるのが気持ちいい動画と、浸かってじっくり思いを巡らす静止画、みたいな感じです。
     インストリームなど「出し方」、尺やクリエイティブなどの「コンテンツ」、SNS上でのライブやリアルイベントとのシンクロなど「組み合わせ」。これ以外にも分類の仕方はありそうですが、動画が持つインパクト、表現力、ストーリー性、情報量、バイラル性などはダイナミックなコミュニケーションを成立させる要素として動画が欠かせない事を者がったていると思います。これまで、テキスト→写真→動画と来たコミュニケーションやメッセージの中心軸が今後はVR/AR/MRといったリアルとデジタル世界が融合されたものにシフトしていく可能性が高いですが、動画はVR/AR/MRの世界でも適応可能なフォーマットですので、まだまだ主役であの時代が続くと思います。
     これに比べるとテレビCMは話題づくりや二次的なバイラル性 (デジタル広告レベルのターゲティングとトラッキングが出来る訳では無いので二次的としています) などでは強みを持ちますが、いかんせん大砲というかコントロールの悪い弾道ミサイルみたいで、時代の終焉を感じます。

  • Mobile Surpasses Desktop
     唯一、「うーん、違うな」としたのはこれ。Mobile Surpasses Desktopで言わんとする所は、2015年頃にはピークに達していて、既に共通認識になっていると思います。例えばの話、今年の2016年4月のTechCruch の記事ですが、Facebookのモバイルユーザ比率は92%とあります。これはもう、デスクトップかモバイルか、といったアクセスデバイスのフォームファクターの話をしても意味が無いです。様々なデバイスでアクセス、というより"ネットワークにalways on" している前提で、問題はデバイスでは無くてそれぞれのOccasionとSituationの理解にあると思う訳です。もっと言えばOSも一般消費者にとってはどうでもいい存在だと思っています。そういう趣旨のことをNewsPicksでもコメントしたのは今年の4月。

    newspicks.com

❖ここまでのまとめ

 という事で7つのサイトを再確認しながら見てきましたが、ふりかえりと呼べる記事をあげていたのはBusiness 2 Communityと digital inforamtion world だけでした。

 もともとこれらのサイトの選定基準は

Google で 、 "Digital Marketing 2016" で2 ページ目までに出てきたWebサイトから要素を拾っています。

 普段見ているサイトかどうか、著名なサイトかどうかは一切無視して、単に、検索結果が上位なところを選んだ事になります。ここはGoogle様のアルゴリズムに全幅の信頼をよせています。

なので、選ばれたサイトはそれなりに優良であったはずですが、残念ながら7打数2安打という「ふりかえり率」でした。

 情報量ではこの二社よりも優っている媒体も山ほどあると思いますが、アルゴリズム的には上位だった訳ですのでこの率の低さはエージェンシーやメディアといった発信や提案を生業とする企業にとって改善してもらいたい体質みたいなものなのかもしれません。自らが発したものをふり返るのは特にメディアは体質的に嫌う筋の話だと思いますが、それがスポンサードであれ、年度途中の軌道修正的な含みのあるものであったにせよ何かしら見直しをかけていた二社*1 は今後もウォッチ続けようと思います。

 別に私は各種媒体に自らに潔癖な占い師であってほしいと幻想を抱いている訳ではありません。予測の当たり外れの検証そのものは目的ではなく手段です。媒体、エージェンシー、コンサル、シンクタンク、なんでもいいのですが、発信者である以上は有限な責任感覚を持ってほしいのです。別の言い方するとAccountabilityです。自らが発信内容を検証出来るCapabilityを持つ事で、結果的には生き残りにつながり、読者や広告主との良い関係作りに寄与するのではないか、と考えているだけです。

❖来年はどんなことがハイライトされるのか?

 話がメディア論みたいになってきたので元に戻します。
 この手の予測系記事が出てくるのは年明けが多いので、1月下旬ころにもう一度上記の4~5媒体に絞って、2017年度版のリストを作ります。
 この投稿の後編では、他人の予測に評論するだけではフェアでは無いので、私の予測(=勘ですね)を先に記録しておくことにします。

  1. デジタルマーケティングという言葉の陳腐化が始まる
  2. マーケティング職の分化が進む (オールラウンダーとニッチ)
  3. マーケティングオートメーションがもたらすチャネルコンフリクトの顕在化
  4. データハンドリングの困難さが際立つ
  5. B2Bにおけるダイレクト化、B2Cにおけるソーシャル起点の加速

  だいたいこの先2年くらいのスパンで見たときに重要な事である、と社長でも役員でも無い一兵卒のわたくしの見立てに過ぎませんが開陳しておきます。所詮は自分視点なので普遍性とか世の中全体との整合はともかく、心の中では自信があります。社会的認知と信用が圧倒的に足りないので、外れても誰にも迷惑かからないので安心しています。

 2017年にこれらのトピックが世の中的、業界的に話題に上ったかどうかはフェアにレビューする予定ですが、どちらに転がっても私にとっては学びです。

 という事で、7500字越えてしまったので、続きは後編でお楽しみください。 

 

*1:寄稿する形式が多いので、編集人がそういった意識をもってコンテンツを構成しいたかは確認できないので、手放しでの評価は出来ません。

「熱狂度」という感情の指標化について

Marketing

 知人の池田さんが社長を務めてらっしゃるトライバルメディアハウスさんが意欲的な取り組みをされています。ちょっと長い文章になりそうな気もするので先に文意だけ書いておくと、

  • 定性的な消費者の態度を定量化して理論構築するのは大変なこと
  • ブランドにとって重要な「ファン」という存在をどう因数分解するかという試み

という意味で良いと思います。

 どこぞのコンサルとか広告代理店が出すのではなくて、サービス事業者が自ら産み出そうとしている所に良心が感じられて「一緒に何とかしたいですね(私には何の力もございませんが。。)」という気持ちになります。

 売上に「良い・悪い」という観念を持ち込むあたりは、企業の永続性という命題に対して大きな問いを投げかけているような野心も感じます。(そんな大風呂敷を広げているのか確認してないので下衆の勘繰りです) 

  さて本題。

 

prtimes.jp

❖概要をまとめると以下のようになります
  •  持続的な成長には短期的な売上より顧客の購買動機となった『感情』的な側面とそこにいたるプロセスの理解が重要である。
  • 実際のマーケテイング活動においては、短期的な売上獲得に向けたプロモーションが存在する事で、ロイヤルティを伴った良質な売上と、伴わない悪質な売上が混在しているのが実情である。
  • では「良質な売上」とはどのようにして測定する事が可能であるのか、という問いに対する一つの回答として同社が提案するのが「熱狂度」という指標である。
  • この「熱狂度」と顧客ロイヤリティの数値化指標として知られているNPS (Net Promoter Score = 正味推奨者比率 ) を代用変数的にX軸に、熱狂度をY軸方向にとると、同じNPSスコアでも、熱狂度が高い方が年間購入金額 (消費量、利用量など含む) に1.3倍の開きがある事が確認された。
❖ここで私の頭の中に浮かんできた事を記録しておきます

Q1 : 個々の生活者が持つ購買力をどう評価するか?

この点については質問してみましたところ丁寧に回答を頂きました。

 

 高価格商材の場合、価値観だけでなく相手の経済力などもありますので、例えば車の場合「BMWのX5めちゃくちゃ良いから買いなよ!」という直接的な推奨よりも、「山田さんが乗ってるBMWかっこいいなー」という影響価値により相手が気になったり欲しくなって、相手が「山田さんのBMどうですか?大きめのSUV欲しいんですよねー」と聞かれた時に「お、車買うの?X5超オススメだよ」という推奨が発生するケースが多いと思ってます。

 この回答に基づくと、高価格帯の商材 ( 耐久消費財の場合が多いと思いますが) においては「熱狂しているから推奨する」のでは無くて、そのカテゴリに対する購買力がある前提の消費者からのキューに接触した熱狂的な人が「積極的に(その探索者に)銘柄を推奨する」という事になる、と理解しました。

 この理解が正しいとすると、その推奨者は「熱狂度は高く、NPSは中立」という属性になるので、上記の相関表で言うと上段中央の象限に該当する事になると思います。

 念のため、「何故NPSは中立」に位置すると考えるのかを補足する意味で、そもそものNPSの質問文を確認しておきます。

How likely is it that you would recommend our company/product/service to a friend or colleague?
 (Wiki記載を引用しています)
*1

 つまり、「推奨する事があり得るか」を聞いているので、上記のような受動的に引き起こされる推奨が予想されるケースでは、少なくとも積極的推奨と考えるべきではない。故にNPSの尺度で言えば中立 (Neutral ) と仮定するのが妥当でしょう、という考え方です。

Q2 : 熱狂と推奨というのは同じベクトル?

熱狂度というものは以下のようにして算出されています。

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(画像はPR TImes さんに掲載されていたものをキャプチャ取っています。)

 回答の選択肢が「ハマっている」から「何となく使っている」という序列尺度と呼ぶには微妙な感じもしますが、聞き出したいニュアンスは伝わります。質問の設計として適切かどうかは統計調査の専門家でも無いので言及は避けます。

 ただ、この質問は「当該ブランドへの関与度」に置き換え可能な印象です。質問するとしたらブランドスイッチングコストを聞き出すような問いでも同じような性向が分類できそうです。

 その違いを明示的にする為には、例えば、x軸にNPS、y軸に購入額や消費量を取った場合において各象限の熱狂度はどのうな分布になるのか、といった分析なども行ってみる事があるいは有効なのではないだろうか、と思う次第です。

 この私の疑問については、統計に明るい方が、多重共線性という視点で質問をされていました。良い質問だと思います。

かっけー。私もこういう理知的に質問力を身につけたものです。

 こちらの方の質問2は「質問1の延長線では? 」と思っていたのですが、私の勘違い。リリースに出ていた絵を見直して気がつきました。各象限に示されている「消費量」というのは、「推奨された人の消費量が増えた ( = ブランドスイッチが起きた) 」だと思っていたのですが、「熱狂的な人で推奨意向が高い人の消費量は高い」という意味なのでした。ちゃんとリリース読めよ、って話ですね。だとすると私のQ1は何となく的外れな気もしてきたのですが、ここまで書き進めてしまったのでログとしてママイキにしておきます。

 

Q3:健全な売上と不健全な売上

これは気持ちは分かるけど、or じゃなくて and であると思っています。

重要なのは、目の前の売上が、値引きやプレゼントキャンペーンなどの短期的・強制的なものによって得られた「不健全な売上」なのか、顧客のロイヤルティや熱狂によって得られた「健全な売上」なのか、そのプロセスにこそあります。

 「熱狂的な人から得られる売上は健全である」という仮説をどう証明するかですね。

何故ならば、以下のような点も考慮されるべきだと考えているからです。

  • 熱狂的な人は値引きやキャンペーンに反応しない、と証明できていない。
  • 熱狂的な人の購買こそが善であると限定すると、FMCGなどの低関与な消費者が多数を占めるカテゴリの存在と整合しない。
  • NPSはその計算式の宿命として、マーケティング対象から「非推奨者」を外すことでスコアそのものは改善します。つまり縮小均衡的な事にも陥りかねないという点を考慮する必要がある。(「熱狂」が「NPS」と同じ価値尺度を有している場合はそういったものを内包しかねない。) 

 例えば、かつて流行ったペプシのボトルキャップを大人買いする人はペプシにとって「熱狂」とは呼べなくなります。なぜなら購買理由が「ペプシ愛」では無くて、「ボトルキャップ愛」の可能性を排除出来ないからです。

 ただ、私は「ペプシを飲んでくれそうな人に対して購買インセンティブが働くようなキャンペーンを仕掛けた結果、実際に反応してくれた」事が「不健全な売上」だとは思いません。POPでの働きかけとしては良かったと思います。

  とはいえ、現在のペプシのプレゼンスを考えると、やっぱりそういうマーチャンダイジングで掴んだきっかけを長期的な関係に発展させる事が上手くできなかったのかな、という認識を持っています。

 なので、このあたりは12月14日に開催されるセミナーに参加して、もう少し理解してから言及したいと思います。

❖おわりに 

 ブランドに対して熱狂的なファンが増える事はとても良い事ですので、そのファンの熱量を指標化して、収益性と成長性に役立てていくにはどうしたら良いか、という視点には激しく同意しているので、こうしたいくつかの懸念を理論的、あるいは論理的にクリアしていく事で「使えるマーケティングの道具」になっていく事を期待したいと思っています。

 ちなみに私、NPSそのものについては「やや疑問を感じつつ、それの限界を知った上で活用していけばいいんじゃないでしょうか? 」というどこに分類されるのかよく分からない座標を取っています。そのあたりのぼやきはこちらにも。

takao-chitose.hatenablog.com

 

 

テレワーク日記 (10-11月) トランプ氏は賛成・反対どちらでしょう?

働き方
  • 不定期連載のテレワーク日記。9-11月の巻。

ついでに世の中のテレワークニュースも少し拾ってみた。

 

❖10月某日@スーパーの駐車場

 ・東京都西部にあるスーパーの駐車場からコールイン。駐車場の無断使用はよろしくないので、お弁当とお茶を購入した上でいざ出陣。

 ・車内でヘッドセットをしながら身振り手振りでろくろを回すように会話している様を買い物に来たおばさんたちに怪訝な目で見られる。下手な尾行か、相当に追い詰められている人のように映ったか。

 ・少し離れたところでは営業マンがシートを倒して瞑想中。きっと大切な商談を前にイメトレしているのでしょう。60分のコールが終わってもまだ瞑想中。

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 ・写真のような仕様で車中コールイン。(画像は一部加工してあります)

 忙しさの演出という意図は全くなくて、オフィスのある人がリモートワークをやろうとするとそれなりに道具が必要になります。どうしても場所によって機能的な意味での主従関係が生じてしまいがちだからです。少なくともヘッドセット、モバイルルーター、二要素認証が必要になった場合に備えて会社のスマホ、この3点は必須です

 今回、コールに入るにあたって選択した自動車という"ワークプレイス"は色々と考えた結果の選択です。電源もあり、空調も効いていて、声を出しても外にはあまり漏れない、という意味でテレワークというかリモートワークに向いていると思っています。

 もとより電話会議が予定されていなくても、チャットやメールのやり取りからハングアウトやSkypeなどでサクッと会話しましょうか、といった流れも起こり得るのが今の働き方だと思っています。それに電話がかかってくる可能性もゼロでは無い。そう考えると、

  • 屋外はノイズと羞恥心の両面で不向き、屋内でも、オフィスビルの1Fを拝借するなんてのはアポイント前のひとときならまだしも、しばらく居座るにはセキュリティの観点でもモラル的にも不適切。
  • デパートやテナントが入っている雑居ビルのトイレとかはスマホだけで仕事がこなせる人には便利かもしれませんが個室で会話なんしていたら通報されるかもしれないし、そもそもトイレの利用目的として駄目。
  • 階段やピロティ―は声が上下に筒抜けたりするし行き交う人にも気を遣う。

てな具合で屋外だと「喋れるて座れて仕事出来る場所」というのがなかなか具合よく見つかりません。

 ちなみに、喋れるかどうか以前に、上記のような場所で手近なところから電源取ってくるのは窃盗ですのでご法度です。(電気は財物ですので、窃取してはいけませんぞ)

 電源とWi-Fiがあって仕事に適しているのはスターバックスなどのカフェです。ただし、こちらも油断大敵で、住宅街の店舗に限る話なのかもしれませんが、PCやタブレット等のデバイスの使用を禁止する時間帯を設けたりしている事もあります。この写真は拙宅の近所のドライブスルーがあるスタ―バックスですが、平日は許されていますが土日祝日の午後は禁止されています。週末にプレゼン作成したり頭の整理をしたいビジネスパーソンにとっては痛いかもしれません。

 朝早く来てやる分には構わないのでどうぞ! という話なのかもしれません。あちらも商売ですので回転率の低下とのトレードオフみたいな事かもしれません。

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 そういった煩わしさを考えたときに、個人的には「自動車でテレワーク」ってアリだよな、と思うわけです。( 大前提として家で出来るという事は言うまでもなく 。)

 

❖10月某日@自宅

 ・午前中はテレワークで午後からオフィスに出勤。という少し上級者(?)みたいな予定を組んでみましたところ、通勤電車でライフを削らなくて良い分、妙にペースが上がってしまいまして、オフィスに行くのがかったるくなりました。このままずっと家でやりたい症候群というものに襲われたようです。 

 ・「午前在宅」のメリットは、いつもなら出かけるときに寝ていて、帰宅したらやっぱり寝ている、という事になりがちな我が子と逢える時間が確保できる事です。イクメンという意味でもこれは重要。実際、心なしか娘も機嫌が良さそうに見えます。やはり「乳は無くても父は必要」という事が再確認出来ました。

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 ・ただし、ノリノリで仕事している時にこんな感じでアピールしにくるので、在宅勤務中に幼児がいる場合は天岩戸にこもる覚悟で仕事しないと駄目だよな、とも実感しています。自宅で保育や介護しながら仕事もするという事を視野に入れた「働き方改革」の意味からしたらこれは想定内な状況な訳です。働く父さんも母さんは大変だ。

 ・それと今回は被害はありませんでしたが、大事なコール中に意味不明な喃語を叫び出すことも警戒が必要です。参加者に「あら、かわいい声が(ハート)」という一瞬の安らぎと、「こいつほんとに仕事してんのかよ」という疑念や不快感をまき散らす可能性があります。さらに、「ウンチ出た」みたいな報告が来た場合は「プライオリティは何か」という問いかけが脳内を駆け巡ります。

 ぜひ、幼児を抱えて在宅勤務に挑まれる方は、お子さんの排便リズムを把握しておきましょう。

 

❖11月某日@移動中

 ・金曜の午後に在宅勤務を取ることに対する罪悪感が少しずつ薄らいできました。ちゃんと仕事はしてますので罪悪感を感じる必要は無いのですが、そこは日本人のメンタリティであります。

 ・金曜の午後に在宅勤務を取得すると、帰宅というか自宅移動の時間はまだ人々がランチや商談にとせわしなく歩いていたりする訳ですね。それだけにビルを出た瞬間に感じるある種の解放感と背徳感みたいなものが正直、ある訳ですよ。小学生の時に学校を早退した時みたいな感覚。

 ただ、習慣とは恐ろしいもので、そんなナイーブな感覚は金曜午後は隔週で在宅という個人ルールを設定したら、ひと月ちょっとで気にならなくなりました。

 

❖関連ニュース拾い読み

 さて、「テレワーク」と言いながら世の中では「働き方改革」というもう一段大きい風呂敷で議論されている訳ですが、その事については別の投稿↓

takao-chitose.hatenablog.com

で言及していますので、興味がある方はひちらをご確認いただきたいのですが、そもそもどのうような領域を含むものなのかだけを引用しておきますとこのようになります。

  1. 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善。
  2. 賃金引き上げと労働生産性の向上。
  3. 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正。
  4. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題。
  5. テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方。
  6. 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備。
  7. 高齢者の就業促進。
  8. 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立。
  9. 外国人材の受入れの問題。

かなり広範囲です。市井の人々の人生から国家的課題まで含まれている感じ。

という事で、私の日記だけだと彩に欠けますので、この範囲に含まれるニュースの中で気になったものを3つ斜め読みしながら次回予告風味でフェードアウト 。

 

❖在宅勤務定着へ制度充実 味の素、管理職に義務付け (2016.11.28)

www.nikkei.com

味の素の在宅勤務は管理職にあたる基幹職、一般職、嘱託社員ら本体の全社員が対象で、約3500人に上る。週1日だけ出社すれば、それ以外は自宅など社外で働ける。形骸化を防ぐため、3分の1を占める約1100人の管理職には原則、週1日を目安に在宅勤務を義務化する方針。罰則は特に設けない。

 原則一日だけ出社であとは自由。いいですね。思い切った感じがします。外部アクセスを支援する為の情報化にも10億円程度投資する予定という事で、本気な感じがムンムンします。個人的に惜しいなと思うのは、

パソコンは深夜時間帯には起動できない仕組みも導入。

という部分です。深夜労働や超過労働が世間を騒がせている日本においては妥協点なのかもしれませんが、そもそも子育てや介護で時間が取れない人の場合、深夜・早朝の数時間で仕事を片付けようという方もいると思われるます。そのあたりの線引きが難しいのは理解できますが、やや画竜点睛を欠く感じがしました。

 

❖「いつ、どこで働いてもOK」ユニリーバ・ジャパンが新人事制度を導入

 お次は外資系企業の例です。グローバル企業としてダイバーシティにも積極的な同社は、女性管理職比率の高さ(課長職以上31%、2016年6月現在)*1 といった数字にも表れています。

www.unilever.co.jp

肝は

「WAA」は「Work from Anywhere and Anytime」の略で、働く場所、時間を社員が自由に選べる制度。1日の標準勤務時間(7時間35分)×1カ月の所定労働日数で算出した1カ月の標準勤務時間をクリアすれば、平日6〜21時の間で自由に勤務時間や休憩時間を決められる。(WWD Japan)

という所でしょうか。

 これは裁量労働と同じですね。24時間をどう使うかは皆さんが考えてくださいという割り切り。一か月の標準労働時間というラインを「在宅勤務の要件を満たすために必要な最低限のライン」と捉えるか、「そのライン満たしていればやりたい時に自分の都合でどれだけ働いてもいいってことね。了解! 」と捉えるかは人それぞれだと思います。この半年はどっぷり仕事に浸かりたいのだ、といったような心意気の時にはこういうルールは便利です。ダイバーシティを担保するという意味では従業員を信頼して自己管理に徹しているのは欧米的な感覚かもしれませんが、私はとても良いと思います。

 

最後にこちら。

❖米ヤフーが在宅勤務禁止へ 制度がもたらすデメリットとは?

 ニュースとしては旧聞に属する話ですが、当時は結構な議論を呼んだと記憶しています。

jp.wsj.com

禁止の理由は記事中にもありますが、

「自宅で仕事をすると往々にしてスピードや質が犠牲にされがちだ。われわれはヤフーとして1つになる必要がある!それには、まず物理的に一体感を高めることだ」

これはどうなんですかね。

 私、個人的には会社のスローガンが "One xxx "とかになるのは良くない兆候という個人的な経験則を心に秘めています。*2 そういう斜に構えた物言いはさておくとしても 、この発表に対してなんとあのトランプ氏が支持していました。

この問題に割って入ったのが米不動産王ドナルド・トランプ氏だ。同氏は簡易ブログサイト「ツイッター」で、メイヤー氏が「ヤフーの従業員に自宅で働くよりも、職場に来ることを期待するのは正しい。彼女の仕事ぶりは素晴らしい!」とつぶやいた。

 こういった「盛り上がる話題」や「価値観を揺さぶる問いかけ」に乗っかってくる感度の高さは、プロレス仕込みというか、ある種の才覚なんだろうなぁ、と。それはともかく、NYTの記事を読みますと、

 face-to-face interaction among employees fosters a more collaborative culture — a hallmark of Google’s approach to its business.

 この部分は業種や職種によって当てはまる場合と当てはまらない場合がありそうです。

 「出社する事で果たされるコラボレーションが重要」という点については、Rob Cross / Reb Rebele / Adam Grant *3 の共同執筆による"Collaborative Overlaod" という論考がHBRに出てまして、これがワークスタイルイノベーションといった文脈で読んでも面白い内容です。

※このテレワーク日記の目的からは背伸びし過ぎなので、別の投稿でこれを材料にして少し愚考する事にしようかと。

hbr.org

*1:ユニリーバ・ジャパン、新人事制度「WAA」を導入 | ニュース&メディア | ユニリーバ・ジャパン 

*2:なぜなら、スローガンとは大抵の場合は「出来てない事」を出来るようにする為に掲げることが多いと感じているので。

*3:Rob Cross | the University of Virginia’s McIntire School of Commerce , Red Rebele | research fellow in the Wharton People Analytics initiative at the University of Pennsylvania, Adam Grant | professor at Wharton

寂れたモールや衰退産業の施設は新しい遊び場に改修しよう (追記あり)

時事考 雑記

※最後に11/21付けの追記あり

 

 今週はお仕事でアメリカに来ています。大統領選直後のアメリカです。州としては民主党に投票したワシントン州なのですが、荒れた輩に巻き込まれたら怖いなあ、と思っていましたが、今のところは杞憂ですんでます。

 昨年はフランスで発生したテロの直後にパリに一週間行ってきたのですが、マシンガンのトリガーに指を掛けたおまわりさんがワラワラ歩いていて、どこに入るにもジャケット脱いで鞄開けてというのに疲れ果てたのに比べると平和です。ニューヨークからこちら(西海岸)に合流した同僚に聞くかぎりではニューヨークはそれなりに盛り上がっているようでした 。有名なジュリアーニ元市長がトランプ支持を表明した事もあるのかもしれません。

 9.11テロのニューヨーク市のかじ取り高い評価を受けた彼にしてみれば、トランプ大統領の方が御しやすいという事なのでしょうか? 国務長官の最有力候補と言われていますので、色々な意味で優秀な方なんでしょうね。ってまた大統領選の方に話が。。。

今回は出張中なので雑記。

❖もしかすると千葉県は最強かもしれない

CNN.co.jp : 米連邦航空局、トランプタワー上空の飛行を制限 - (1/2)

 と、言ってるそばからなんですが、今回はトランプさんじゃなくて、ドローンの話。

 サーフィンに行ったときに天候回復や休憩している時にドローンでもやったら楽しいかなぁ、なーんて思っていて密かに買いたいと思っているのですが、いきなり墜落は怖いので練習とか必要だような、と思って調べたところ、都内はほぼ飛行禁止。民泊禁止の比じゃありません。これじゃ練習出来ない。。。

www.dji.com

 しかし、いつもサーフィンでお邪魔している千葉の外房エリア、富津から先の内房エリアはほぼ全開でOK。さすがは千葉県、日本の盲腸としてゆるぎない解放感です。

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↑DJI社の『安全飛行フライングエリアの制限』のページよりキャプチャーさせていただきました。最新の情報は同社のページなどで必ずご確認頂きたく。

 千葉県は豊富な海岸線もさることながら、ゴルフ場の数も全国有数ですので、個人的には、アウトドア系レジャーの一大集積地になっていただきたいと考えています。

 ゴルフ場に関しては、オリンピックで取り上げられたり、ジュニア育成など業界関係者の努力も継続されていますが、温泉や城といった後背地に恵まれているエリアならばともかく、アジアの富裕層を取り込みながら国際化を進めてパイを広げていく事も戦略としてはアリですが、そういった要件を特に満たしていない周りは田畑と雑木林、といった典型的な関東近郊のゴルフ場の場合、日本の人口推移に任せている限りははじり貧は免れ得ません。

 一方で、MTB、スケートボード、インラインスケートといったXスポーツ系、トレイルラン、サバゲーといったレジャーについては既存のレジャーとのバッティング ( 例えばトレッキングとトレイルランなど) もあって「やりたいけど機会が限られる」事が普及の足かせになっている側面もあると思います。*1

 いずれにしても、中期的に見て経営環境が厳しいゴルフ場はオートキャンプ場を併設して、上記のようなレジャー設備や体験農場といったものを備えた施設に改修したりすれば、面積あたりの収益性はいい線行くんじゃないでしょうか。まったく鉛筆を舐めてないジャストアイデアですが、時代感覚的に間違ってない気はします。

 その結果として「アウトドアするなら千葉」というポジションがより強固になる気がするのですが、知事、どうでしょうか?

 別に私は千葉県の商工観光課勤務でもアンバサダーでも無いのですが、東京のとなりに遊びの宝庫が出来るのは人口減少の社会においては悪い話では無いのではないかと。

 ❖そして気になる廃墟問題

さて、タイトルにもある「寂れたモール」問題です。

www.j-cast.com

 とかピエリ守山といった横綱級が有名ですが、ここなんかも躯体を活かすという意味ではサバゲー場もいいですし、外壁はボルダリング、内部はドローンレース場にするとかどうでしょうか。

 eスポーツなんかもそうですが、ドローンレースは海外では結構メジャーになっています。

thedroneracingleague.com

 この辺の新しい遊びやスポーツをくまなく拾い上げるレッドブルも既に参画していますので、時代が認めた遊びと言っていいでしょう。

www.redbullracing.com

 こういった新しい遊びのニーズに対して、どうも日本は既存の規制や古い価値観が邪魔をして、disruptive innovation がもたらす新しい市場を活かしきれていない気がします。今回の主題のドローンに関しては

ドローンの市場(機体+サービス)は、
 • 2020年には634億円に成長すると予測(2015年比約16.7倍の市場)
 • 2020年以降さらなる市場拡大が見込まれ、2024年には2,270億円を超えると見込む
サービス分野別には、
 • 2016年時点では農業用が50%強を占める
 • 2016年以降は、農業用市場も引き続き拡大するが、整備・点検、測量などの
   市場が大きく伸長すると予測する

といった予測*2も出ています。

 外野として無責任に言わせてもらいますが、廃墟級の施設であれば、ついでに広大な駐車場はセグウェイや自動運転の実験場にするなど、街ぐるみで「造ってしまった箱を何とかする」方法に舵を切るべきかと。

 造った箱を維持する為に「お買い物」という単一目的の割りに競合が多い業態を続けるよりは、多様なニーズに応える施設に少しの改修で業態転換してしまうというのはオプションとして悪くないのではないかな、と。

 ましてや「廃墟」というブランドを纏ってしまってから小売りのテナントを集めるよりは有効な打ち手なのではないかと思います。いくら流行りつづけるショッピングモールを造れたとしても地域ブランドの強化にはつながりません。

 それよりは、あるジャンルのニーズに関しては聖地と呼ばれるまで磨き上げた方が競争優位に立てるでしょう。そうなると一企業に委ねる話では無くて地方自治体としての戦略の話になりますけどね。

  ショッピングモールの本家であるアメリカにおいても、ECの台頭で衰退しつつある業態と認識されていて、モールからオール ( Mall > All ) というコンセプトの修正なども取り込みながら生き残りに必死な様子もうかがえます。

The Economics (and Nostalgia) of Dead Malls 

by Nelson D. Schwartz Jan.3, 2015 / The New York Times

 2015年の記事ですのでやや古いとはいえ大きな市場の流れは当時と変わりません。ちょうど投宿しているホテルの目の前に街の中では最大のショッピングモールもありますので、サイバーマンデー前のモールの様子がどんな感じなのかを明日は眺めてこようかと思います。差し支えの無い範囲で写真を撮って後日追記出来ればと思います。

眺めるだけでは申し訳ないので、売上にも貢献する所存であります。

 

❖11/21 追記

 初稿の最後で触れた通り、

サイバーマンデー前のモールの様子がどんな感じなのかを明日は眺めてこようかと思います。差し支えの無い範囲で写真を撮って後日追記出来ればと思います。

 ショッピングモールで変質者扱いされない程度に写真撮りながら観察してみました。

 今回はシアトルのダウンタウンでは無く、車で30分くらいの距離にあるBellvue という街です。どんな街かというと、

  • ワシントン州の州都シアトルの郊外都市で州内では二番目の都市である。
  • リーマンショックの影響も比較的少なく、発展が続いている都市であり、一人あたりの所得はワシントン州522の行政区の中で6位と上位である。*3
  • 人口は134,000人 ( 2013時点)で、日本で言うと東京都武蔵野市ぐらいの人口です。*4

です。

 そんな街の中心部にあるのがこのBellevue Square。入口はあちこちありますが、メインはこちら。

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 アメリカのショッピングモールの例に漏れずなかなか広大です。俯瞰したのが下記のイラストです。( Source : Bellevue Square Expansion | Site Plans ) 

http://bellevuesquareexpansion.com/cms_images/pc-7-26-3-D_AerialMap_1-14_900.jpg

 買い物の中心は Macy's とNordstorom という中級と高級デパートを擁したBellevue Square ですが、そこだけでも500,000sf ( =46万㎡ = 4.6ヘクタール ) という広さです。日本人に馴染みのある変換で言うと、東京ドーム約10個分 ( @46,755㎡) の敷地になります。全体構成としは上図の通りホテルやオフィス、住居なども含んだ都市計画になっていますので更に広大です。

 で、ホリデーシーズンに突入するタイミングなので混んでいるのかと思いきや、それほどでも無かったです。比較的所得水準が高い街とは言うものの、後背地としての人口が13万人程度ですし、そもそも平日という事で劇的な混雑というのはありませんでした。

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 各店舗がそれなりにデコ―ションしてますが、日本みたいに「クリスマス」というワードは全面的には出てこないのはアメリカではお約束ですが、赤白系の装飾の他、Nordstoromなんかは以下のようななかなか良いセンスのコピーで「ここで買っちゃいな」というアピールしてました。

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 ビクトリアシークレット以外の殆どのお店に入りましたが、正直、価格だけで言うなら日本の場合は東京近郊のアウトレットに行けば365日それよれ低価格で手に入るし、福袋はともかく、店頭の大事な役割であるアソートメントに関しては日本のリテールの方が少なくとも色々と考えているような印象を受けました。

 ここは店舗+ECというオムニチャネル全体で収益をどう考えるか、といリテール側の戦略にもよりますので、ひとつのモールのある日の風景を切り取って結論じみた事は言えませんが、マーチャンダイジング密度 (商売っ気と物欲の熱量/ 平米)*5 が全体的に低い印象は受けました。これからホリデーシーズンが本格化するので心配しなくても今はこんなレベル感なのだろうな、と思います。 後日、アメリカのホリデーシーズンの消費動向が色々とレポートされると思いますので、それを眺めつつ、「あの時感じた感覚で結果このくらい」という検算をしてみたいと思っています。

 ちなみに個人的にはしっかりアメリカ経済に貢献してきましたよ。右の袋は子供服。子供服は圧倒的にアメリカが安いので、日本で買うのが馬鹿らしくなります。

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 そうそう、それから本稿では「アウトドアするなら千葉」と千葉アゲしていますが、帰国した日の帰り道、東関東自動車道は成田から船橋あたりまで交通集中で渋滞でした。

 圏央道や2024年まで続くアクアラインの割引で半島側はだいぶ改善していますが、内陸側の道路網の弱さは否定できません。アクアラインの割引も千葉県第二の都市である船橋市を東西に貫く国道14号が未だに片側1車線というのは信じられません。(R357は産業道路とみなす) ここが混むおかげで渋滞が成田くんだりまで伸びてきたのではないかと疑っています。

 このあたりのインフラ整備は「遊びに行く目的地」というポジション獲得においては重要です。せっかく国税と折半して割引を引き延ばしているアクアラインがある訳ですから、これ経由で流入してくる観光客やビジネス客の増加を通じた県の税収アップで内陸も頂きたい所です。

以上、追記でしたー。 

 

 

 

 

*1:このあたりは公益財団法人日本生産性本部のレジャー白書を買って読めばいいのですが、個人で趣味のブログ書く為に買うべきかどうかは大いに悩むお値段です。

*2: 株式会社シード・プランニング 2016/5/6リリース 

*3:ベルビュー (ワシントン州) - Wikipedia

*4:吉祥寺などのオシャレなエリアと杉並区あたりと連なる高級住宅地、井の頭恩賜公園など恵まれた住環境が人気のエリアでございます。

*5:そんな単位は無いですが、売る気と買う気の面積あたりの熱量の総和をカロリーで表すイメージ

アメリカ大統領選 : 塗り絵で理解する民意

時事考

 お前はどれだけ大統領選が好きなのだ? という感じで連投してますがこれで最後。

 前回の投稿で、過去20年の民主党 (青) vs 共産党 (赤)の陣取合戦の変遷を簡単に紹介しました。

takao-chitose.hatenablog.com

 今回は締めくくりです。11月10日現在ではWikiに上がってないので、今年の結果については細かくて評判の良いThe New York Timesのデータを基に追加してみました。

❖全体

 まだ、最終的な得票数になっていないようなので、改めてソースの確認が必要ではありますが、大勢は決したという事で2000年から並べてみました。共和→共和→民主→民主と来ての共和党政権復活という流れです。

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 ❖中部共和党ベルト ( Mid Republican Belt ) 

 アメリカの地域の呼び方として、バイブル・ベルト ( Bible Belt -- 聖書地帯) と呼ばれるエリアがあります。具体的には、中西部から南東部にかけてのエリアで、テキサス州、カンザス州、ヴァージニア州、フロリダ州北部のあたりを指していると言われてます。*1 

 この呼称自体は反プロテスタントの論者などから宗教に熱心な地域 (プロテスタントや原理主義的なキリスト教徒)を揶揄する場合にも用いられるので注意が必要な言葉ですが、今回、赤青の地図を時系列で眺めていて、このバイブル・ベルトとは異なるものの、共和党寄りである諸州がアメリカ中部地帯に多い事が再確認出来ました。

 その意味で、浅学にして学問的に正しい呼び方があるのか分かりませんが、ここでは勝手に「中部共和党ベルト ( Mid Republican Belt ) と名付けてみました。下図で赤点線で囲んでいるあたりのエリアを指します。1980年のカーターvsレーガンの時から変わらず共和党支持の州になります。

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 バイブルベルトと似たような感じで、沿岸部の自由主義陣営に対する保守層という位置取りで語られる事の多いエリアだと思っています。実際、アメリカの二面性 (月ロケットが作れるのに産まれた州から一度も出ない人も結構いる、という両極なところなど) を表していると思うのです。

 今回さんざん引用しているThe New York Times のデータの素晴らしい所で、各投票所レベルまで赤と青を分解してくれていますので、そこを見ると、少し違う風景も見えてきます。今回の選挙で民主から共和に変わったフロリダ、オハイオ、ペンシルバニアを例にして見てみると、このような具合。

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  小さすぎて分からないですかね。。。要は、州都と言われるような都市部においては民主党、その他の広範囲で共和党という色分けが認められます。これまで、沿岸部と内陸部、といったレベルで語られていた支持政党の違いが、個々の州内における都心部と地方においても同種の違いが存在する事がこのデータから確認出来ます。

❖Change from 2012

 こうした鞍替えした州の背景にあるものを理解する上で、これまたNYTのデータが素晴らしいので、そのまま加工させて頂いております。2012年の大統領選挙 (Obama vs Romney ) とからの民意の変化を可視化したものになります。(何度も書きますが元データはこちらでご確認ください。とても面白いです。) 

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 左側の地図は、2012年の時と比べて、民主から共和への変化を赤矢印、共和から民主 への変化を青矢印で示しています。俯瞰して明らかなのは右側で赤矢印が非常に濃くなっているのが見て取れます。 中部から東部にかけて共和党シフトが起きている事が確認できます。

 右側の地図は、2012時点でのLargest voter group です。ここでは学歴で色分けをしています。凡例が小さいので補足すると、

・青=White, no college ( 白人、単科大学未満)

・空色 = White, some college (白人、一部単科大卒)

・深緑■ = White, college degree (白人、単科大卒)

・ベージュ = Minority (マイノリティ)

という色分けです。

左側の地図と行ったり来たりしていると、明らかに低学歴の白人層が多い地域で民主から共和へのシフトが起きている事が体感できると思います。

❖最後に

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 陣取り地図で見る限りでは全体的に赤色に染まった今回の選挙ですが、ヒラリーさんは、votesの数では59,915,938 votes (47.7%)とトランプ氏の59,689,467 votes (47.5%)を上回っている事からも、それなりの支持は獲得していた訳ですね。それが積極的な選択か、反トランプという消極的な選択かは別として。

 ただ、大統領選挙という仕組みでは負けましたが、今回の選挙結果が示したのは国論を二分するような価値観の相違が確実に存在している事。そして、オバマの登場で巻き起こったある種の期待感に対する諦観も見られたこと。それが、いくつかの州で起きた鞍替えにも繋がっていると見ることも出来ると思っています。

 アメリカって国はとにかく馬力のある国ですので、自らが民主的に選んだリーダーを尊重して、どのように変化してくるのか楽しみです。

 エキセントリックな発言 (倫理的に問題はあるけれど、多くの発言は決して違法性があるものでは無かった) を現実の政治の舞台でどのように回収したり、修正してくるのかは見ものです。当選直後のコメントを読む限りでは、二期連続の大統領にも意欲が無い訳では無そうでしたので、トランプ大統領の打ち手にしばらくは一喜一憂してまいがちな日本ですが、そういうリアクティブな姿勢だとますます世界の潮流から置いていかれてしまいますので、遍くGDPに貢献している方は奮起しないといかんです。

 次に切ってくるカードをよく読むことは大事ですが、その為には自らがどうしたいのかの意志を持っておく事が欠かせないのです。(なんか最後に上手い事言った気分w) 

 

アメリカ大統領選 : 民主党と共和党の塗り絵はどうなるか?

時事考

 先ほどアメリカ大統領選に絡めて駄文をアップしたばかりなのですが、

takao-chitose.hatenablog.com

 何せ4年に一度の祭り選挙ですので、少し違う視点で気になったこともここに控えておこうかと。

❖Google と日経

 まずはGoogleが投票結果をタイムリーに分かりやすく伝えるべく検索とYouTubeを活用して有権者を支援するという意志表示をしています。既存のメディアが行う速報合戦そのものに参画するというよりは、それらを整理して全体像を提供しつつ、身近な投票所を説明するなど投票行動そのものに対する支援という文脈のようです。

 もちろん、Googleさんの事ですから、投票者のデジタルボディランゲージに基づいてAIブン回しつつ、かつてネイト・シルバーが作り上げたような世界を更に高めていくのかな、とは思います。

 これまでメディアは社会や人の動きを拾ったり集めたして発信するアンプの役割りでしたが、ことGoogleに関して言えば、サービスを利用している人達が残していった足跡とも呼べるデジタルボディランゲージが大量にありますので、それを整理すればニュースはいくらでも提供できると思います。そういった観点で彼らの動きをみると、既存メディアにとってはGoogleが自ら「集めて伝える」という行動に出る事はちょっと怖い感じがする事かもしれません。

 また既存メディアには程度の差こそあれ支持政党の色がついているものですが、どこまでニュートラルに脚色無添加に伝えていくのかも後々、レビューしたら面白そうです。

blog.google

 さて、日本時間の11/9 9:00 からの投票スタートという事で、日経も気合の入ったサイトで待ち構えています。サイトのデザインは悪くないのですが、現時点では情報量が少なさそうなのが気になります。折角なので、投票経過と共に変化していく株価など経済的な情報を付加していってもらえると楽しい気がします。

vdata.nikkei.com

 

❖今回はどんな配色になるのか?  地図も確認しておこう

 さて、本題はこちらでして。

 共和党と民主党という二大政党で争われる大統領選挙。アメリカ各州がどちらに傾いているかというのを並べてみました。

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ソースはこちらになります。

United States presidential election maps - Wikimedia Commons

 リンク先を見て頂くと、1789年まで遡れてとてもとても楽しい感じですが、上の6つは直近20年を並べてみたものになります。青がDemocratic (民主) で赤がRepublican (共和) です。かたくなに赤い州、青い州、時代とともに変わる州、というのがあってとても趣があります。

 近年、もっともアメリカ全土が赤く染まったのは、レーガン政権 (1984) の時。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/ab/ElectoralCollege1984.svg

 この時は唯一ミネソタだけが青でした。スゲー。1972年のニクソン政権の時にも同じようにマサシューセッツ以外は真っ赤という状況でした。一方で、緑一色ならぬ青一色になった事はあるかというと、無かったです。限りなく青一色なのが1936年のルールズベルト政権まで遡ります。この時はバーモントとメーン以外は青でした。

 つまりアメリカ全体の各州を塗り絵的に見てしまうと、1970年以降はほぼ共和党支持となる州が多く、全体的には赤が優勢という事になるのですが、日本で言う所の一票の格差では無いですが、支持率では無くて選挙人の配分で決するのが特徴だけに、都市部と地方の関係とか、人種や宗教感といったアメリカを構成する多様な価値観が垣間見えてくる面白さがあります。次にカリフォルニアが赤くなるとき、アメリカは大変化するような気がしています。

 このあたりは、少し古い本ですが浅井信雄さんの「アメリカ50州を読む地図」(新潮文庫)なんかを読んで、アメリカの多様性にますます惹かれた私としては興味の尽きないところです。このあたり読んでから町山さんのアメリカ現代事情に関する著作を読むと、硬軟織り交ざって楽しめると思います。

 

 例を見ないエキセントリックなトランプと政治家としてはキラキラのキャリア&夫婦かつ女性で初という歴史的な偉業に挑むヒラリーという見逃せない対決、の割りには勝馬と目されるヒラリーの評判も決して芳しいものでは無いだけに、 今回の選挙ではどんな塗り絵が出来上がるのかとても楽しみです。そういう意味では赤青混在なんでしょうけど、アメリカの中で何かが変わった回となるような気はします。